第108話 神戸ダンジョンの一階層から五階層を攻略

 神戸ダンジョンの一階層のセーフティーゾーンで、一階層から五階層までの情報について話し合う。


「詩音、皐月、一階層から二十階層までは迷宮型だ。岡山ダンジョンで慣れていると思うから、詳しいところは省くが、出てくる魔物がゴブリンだけでなくコボルトとオークもいる。戦ったことはあるか?」

「福岡ダンジョンで戦ったっす」

「オレは初めてだ。初めてはオレだけか?」

「皐月はこれから経験を積めば良いんだ。そんなことをいちいち気にするなよ。全部人型だが特徴が違う。ゴブリンは嫌というほど戦ってきたから良く分かっていると思うが、コボルトはゴブリンより速いから気をつけろ。オークは力が強いし、大きいから上から棍棒を振り下ろして来るぞ。皐月、力負けしないようにな。それぞれの魔物の上位種も混ざって来るから要注意だ。お互いに声を出していこう。皐月と詩音は最初から連携を取りながら進んで行くんだぞ。低階層でもBランクダンジョンなんだ、一瞬も気を抜くなよ。正輝は自由に動いてくれて構わないよ。僕が先行して様子を見るから前方は任せてくれ。通路の分かれ道では各自気をつけるようにな」


 【全探知】スキルで魔物の気配を探り、探知した情報を共有していく。


「前方に五匹ほどの気配がある。正輝、全部一人で倒すなよ。皐月と詩音で一匹倒せ。行くぞ!」


 コボルトのパーティだ。皐月が挑発で一匹引き付けた。残りのコボルトで近いところにいる奴に接近して刀を一閃する。更にもう一匹にも袈裟斬り。コボルトは黒い靄になり消えていった。僕は残ったドロップアイテムを回収していく。


「麟瞳、かなり速くなってるぞ!どれだけ強くなってんだよ」

「ああ、毎日頑張っているからな。でも、正輝にはまだ届いてないようで残念だよ」

「いやいや、全力を出してないだろ。どちらが上かなんて分からないぞ」

「皐月は戦ってみてどうだった?」

「弱いコボルトだろ、ちょっとゴブリンより速い程度だ。上位種とも戦いたいぞ」

「油断はするなよ。詩音も大丈夫か?」

「大丈夫っす。皐月がしっかり引き付けてくれてるっす」


 探索を再開し、ゴブリンやコボルトの集団に接敵する度に危なげなく倒していく。三階層で初めて三匹のオークにエンカウントした。


「前から三匹のオークだ。正輝と僕が一匹ずつで、皐月と詩音の二人で一匹倒せ。行くぞ」


 振り回す棍棒を躱し、腕を斬り落として棍棒を収納する。そして首を斬り落とした。詩音は体格差が激しいので槍で心臓を狙って倒していた。正輝は僕よりも倒すのが早い。


「皐月、オークも大丈夫そうだな」

「ああ、問題ないぞ。複数が相手でも任せてくれていいぞ」

「だんだんと数も多くなって来る。その時は頼んだぞ」

「おう、任せておけ!」


 四階層で武器持ちのゴブリンとコボルトのパーティが出てきたが問題なく倒した。五階層では十匹のオークの集団ともエンカウントした。


「オークが十匹のパーティだ。最初に皆で魔法で攻撃して数を減らそう」

「全員が魔法を撃てるのか?」

「ああ、詩音が火魔法、皐月が土魔法、僕が火魔法と雷魔法だ。正輝は火魔法で攻撃してくれ」

「了解」


 オークが射程距離に入った。


「よし、行くぞ!」


 一斉に魔法を撃ち込む。正輝と僕の火魔法は一撃でオークを消していたが、詩音と皐月の魔法ではまだ一撃とはいかない。数を減らしたところで近接戦闘に切り替える。最後のオークに正輝が攻撃を加えてすべてのオークがいなくなった。


「麟瞳、お前魔法の威力も大分上がっているな。ビックリだぞ。それに二人もオークにダメージを与えるほどの威力があるな。将来が楽しみだな」

「うちのパーティも《百花繚乱》と同じように全員が魔法を使えるのが強みだ。ポーションを飲みながら、出来るだけ魔法を使って威力を上げるように頑張っているんだ。僕もファイヤーアローが使えるようになったよ」

「まだ一年も経っていないのにファイヤーアローか?俺よりも使えるようになるまでの期間が短いな。本当に追い越されそうだな。いや、魔法だけならもう追い越されていそうだな」 

「マジックアイテムで魔法の底上げもしているし、岡山ダンジョンで魔力ポーションも大量に入手しているから数が撃てるおかげだよ。流石にまだ追い越してはいないよ」

「マジックアイテムは麟瞳だからこそ入手できるんだ。誇って良いと思うぞ」


 五階層のボス部屋に着いた。順番待ちは一組だけ、並んで待った。


「ボス部屋は三十匹から五十匹の混合集団だ。幅が広いが多い方の五十匹と考えて作戦を立てておこう」

「俺が最初に一撃入れようか?」

「そうだね、一番多いところに向けて一撃頼むよ。僕は遠距離攻撃の出来る後衛の魔物に魔法を撃ち込むよ。詩音と皐月は正輝が最初の一撃を放ったら、残った奴を皐月が引き付けて詩音が止めを刺すようにしていこう。正輝が一撃を入れる前に前に出るなよ。巻き込まれるぞ。弓や剣を持った上位種もいるからな、気をつけるんだぞ」

「分かったぜ」

「了解っす。耳栓はしなくて良いっすか?」

「ああ、僕の一撃のように五月蝿くないからね。耳栓は必要ないよ」

「なんだその耳栓って」

「僕もこの刀で威力の強い魔法で一撃かますことが出来るようになったんだけど、雷だから物凄い音が出るんだ。最初に使った時に怒られたんだ。耳が痛いって」

「俺も雷魔法の一撃を一度見てみたいな」

「じゃあ、十階層のボス部屋で使うよ。正輝はヘルメットを装備しているから、耳栓はしなくても大丈夫だと思うよ」


 しばらく待って僕達の順番になった。正輝を先頭にボス部屋に入る。扉が閉まり戦闘開始だ。正輝の巨大な火の斬撃が魔物達を襲った。炎の飛ぶ斬撃の通った後にはドロップアイテムだけが落ちている。残った後衛の魔物にファイヤーアローを撃つ。後衛がいなくなるまで撃ち込んだ。僕が魔法を撃ち終わる頃にはもう前衛の魔物は少なくなっていた。正輝が無双しているよ。詩音と皐月も頑張っている。僕も負けないように刀で斬っていった。さほど時間がかからずに討伐完了し、いつもの癖でハイタッチをした。正輝も巻き込んでね。ハイタッチ後にドロップアイテムを回収していると金色の宝箱が現れた。


「麟瞳と一緒だと、嘘みたいに宝箱の色が良くなるよな。岡山ダンジョンでも金色の宝箱が出て、このマジックポーチを手に入れたんだよな。麟瞳、宝箱を開けてくれ」

「正輝が開ければ良いと思うよ。ボス部屋攻略で一番活躍したんだから」

「宝箱は運が良い人が開けた方が良いだろ。麟瞳が開ければ良いと思うぞ」

「うちのパーティでは、宝箱を開ける順番を決めているんだよ。宝箱を開ける楽しみも探索者にとって大切だと思うんだ。開ける時にワクワクするだろ、それを皆に味わって欲しいんだよ」

「分かったよ。どうなってもしらないぞ。じゃあ、開けるぞ」


 宝箱の中からは、お札のようなものが二枚出てきた。


「ほら、変なものが出てきた。もう俺は宝箱を開けないぞ」

「鑑定してもらわないと何なのか分からないじゃないか。金色だぞ。多分良いものだよ」


 僕達は宝箱の中身を回収した後に、ボス部屋奥の階段から六階層へ降りて行った。










 

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