第98話 姫路ダンジョンに行く前に
「全員のスキルの確認が出来たから、今度はダンジョンについて確認をしておこう。皐月はちゃんと情報を頭に入れているか」
「おう、しっかりと覚えているぞ。ずっとゴブリンばかり相手にしてたから、いろいろな魔物と戦えるのが楽しみだぜ」
姫路ダンジョンは全五十階層の洞窟型であり、難易度はCランクだ。十階層ごとにタイプの違った魔物が出てくるダンジョンで、そこがこのダンジョンの特徴であり、僕達がこのダンジョンを選んだ大きなポイントだ。
「明日からしばらくは一階層から十階層を探索する。詩音、どんな魔物が出てくるんだ?」
「アント系っす。ワークアント、ソルジャーアント、キラーアント、フライアント、マザーアントが出てくるっす」
「そうだよね。皆はアント系の魔物と戦ったことはあるのか?」
三人とも首を横に振っている。戦ったことがないらしい。
「僕はDランクの高梁ダンジョンでワークアントとソルジャーアントとキラーアントとは戦ったことがあるよ。ワークアントは群れているだけで弱いからそんなに気にする必要はないと思うけど、ソルジャーアントとキラーアントは、頭部と胸部の間のくびれたところを狙って刀を振り下ろして倒したんだ。前に使っていた斬撃が飛ばせる刀を使っていた頃だね。その頃は今ほど火力がなかったから一匹倒すのも大変だったな。その時、綾芽が槍で頭部を一突きして氷魔法で倒していたんだ。だから詩音は炎の槍で最初は戦うといいと思うよ。美姫も魔法弓で攻撃すれば大丈夫だろう。皐月は美姫の護りをしながら、土魔法の練習かな?勿論、シールドバッシュやカウンターのスキルで攻撃してくれても良いよ。僕は前と一緒の方法でチャレンジしてみるよ。どれだけ成長したのか確かめてみるつもりだ。この階層では個人のスキルの底上げを目標にしよう。あと、ここのアリもたまに鉱物をドロップするって情報にあったけど、高梁ダンジョンと同じような感じなのかな?Dランクダンジョンだけど一日で五百万円か六百万円ぐらいの買取り金額になったんだ。宝石が凄い高かったのを覚えているよ。もしかしたら良いことがあるかもしれないよ」
「なんでその情報を早く言わないんですか?それだけ高額ならクランの依頼に出てるかも知れません」
「いやいや、Cランクダンジョンのドロップ品だぞ。そんなの普通あると思わないだろ。大体国の機関や企業が依頼を出すんだろ、そんなところが宝石なんか欲しがるのか?」
「宝石なんかってよく言えますね。世の中のマダムを敵に回したいんですか?リーダーが勇者だったとは知りませんでした」
とりあえずクランのことは真姫に聞けとばかりに、美姫が真姫に連絡を取ることになった。
「まずはこの階層で二週間頑張ろう。Bランクダンジョンへ挑戦するための練習だ。各自課題を見つけてステップアップしていこう。自分のことでもパーティに関することでも、気になることなどあるなら相談すること、なんでも言い合えるパーティにしていこう」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日も朝起きて鍛練をおこなった。ランニングも景色が変わると新鮮な気持ちになる。国宝の姫路城までの往復コースだ。真っ白なお城は遠くから見ても綺麗だった。今度の休みにでも行ってみたいものだ。鍛練の後、シャワーを浴びてリビングに行くと、何故か人であふれ返っていた。
「なんでここに《桜花の誓い》のメンバーがいるんだ?」
「頑張って始発で来たわ。クランの初めての依頼よ。とにかく皆で頑張りましょう」
真姫が当然のような顔で言ってくるが、何のことだかサッパリ分からない。
「リーダー、宝石の納品の依頼があるらしくて受注してしまったようです。真姫が二つのパーティで依頼達成まで頑張るんだって張りきっています」
「綾芽から高梁ダンジョンの話は聞いたわ。確実に達成できる依頼だわ。逃す手はないでしょう」
「どんな依頼なんだ?」
「ダイヤモンドは1.5カラット以上、それ以外の宝石は5カラット以上の物を納品する依頼よ。品質によって価格は変動するらしいけど、ドロップしてくれればクランハウスのリノベーション費用が出せるわ。皆で頑張りましょう」
「いやいや、《桜花の誓い》は何処に宿泊するんだよ?」
「そんなの決まっているじゃない。ここよ、ここに皆で寝泊まりすれば必要経費も大幅に節約できるわ」
「4LDKなんだぞ。一人一部屋で考えてここに決めたんだぞ」
「まあまあ、依頼達成迄の間だけよ。三人はそれで良いって言ってくれたわ。それに麟瞳さんは一人部屋よ。まさか他の子と一緒には出来ないわ。麟瞳さんにとっては残念かも知れないけどね」
全然残念ではないから。風呂とか、ご飯とかいろいろ気を使うだろ。こうなったら僕の意見は聞いてもらえないよな。早く依頼を達成して帰ってもらえるようにしようと決意した。【豪運】スキル様、よろしくお願いします。
朝食はダイニングとリビングに別れて食べた。焼きたての美味しいパンを真姫が買ってきてくれていた。こういう気遣いは出来るんだよな。憎めない子なのである。
因みに、綾芽達のパーティ名は《桜花の誓い》のままである。良い名前が思いつかないらしい。六人目は何も誓ってないのかな?早く良いパーティ名を考えられると良いね。
さあ、姫路ダンジョンに行くとしよう。
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