第40話 《百花繚乱》のパーティハウスで
改札口で麟瞳と別れた俺は、新幹線の指定席に座り岡山での滞在を振り返った。余りにも現実離れしたドロップアイテムの数々には驚きを通り越して戸惑いを感じてしまう。麟瞳が《百花繚乱》に居たときは、確かに今の四人での探索で得られる収入の二倍から三倍の収入を得ていた。それでも凄い事だったが、岡山での三日間に探索したFランクからCランクダンジョンの結果を考えれば霞んでしまう。麟瞳には魔石のドロップや宝箱のグレードの変化について調べるために岡山に来たことを伝え、その結果をパーティメンバーに話して良いという許可は貰って来たが…………どう話していけば良いのだろうか?まあ、体験したことをそのまま話すしかないな。
京都駅からは少し離れたパーティハウスへと戻って来た。このパーティハウスは高校を卒業してからずっと住み続けている一軒家だ。見た目は少し古いが、部屋数も多くリフォームしていて建物の中は綺麗である。隣にある新しい住居に住む大家さんのおじいさんとおばあさんが庭の手入れなどをしてくれるアットホームな感じもとても良い。麟瞳が家賃も相場より安いここを見つけてきたんだったな。収入が増えてもなんだか居心地良く、引っ越しをしないままここを拠点にして活動を続けている。
麟瞳が言っていたように、いつもお世話になっているおじいさんとおばあさんにお肉を渡しに行こうかな?でも、おじいさんとおばあさんにお肉を送るのは、勇者でもない俺にとってかなりの冒険のような気がする。肉好きのワイルドな年寄りだと信じて渡すのもありかもしれないが、ここは無難にスイカにしておこう。俺は麟瞳と違って手土産に八ツ橋を持って行くくらいには気が利くんだよ。
おじいさんとおばあさんに捕まって時間を使ってしまった。麟瞳の話で盛り上がり、帰るに帰れない状態になってしまった。麟瞳は朝の訓練の後におじいさんとおばあさんとよく話をしていたそうだ。スイカは麟瞳がダンジョンで取って来たものだと知ると大層喜んでくれた。お肉も大丈夫なワイルドな方々という情報もしっかりと得ることができた。今後のおすそ分けもし易くなってなによりだ。
「ただいま!」
やっとパーティハウスにたどり着いた。今日帰ってくることはパーティメンバーに伝えている。丁度夕飯時だ、久しぶりに皆で食卓を囲みながら報告をしよう。勿論料理は、麟瞳のお母さんの超絶美味い料理だ。
「正輝さん、食器を洗ってどうしたんですか?」
「凄く美味い料理を手に入れたから、久しぶりに皆で食べながら報告しようと思ってな。食器は長く使ってないから洗った方が良いかと思ってね。夕飯まだだろ。和泉、もう少しで用意できるから、二人を呼んできてくれ」
テーブルに麟瞳オススメのホーンラビットの丸焼きとウルフの香草焼き、ビッグラビットのクリームシチュー、最後に大量に握ってくれたオニギリを出して準備万端。しまった、野菜がないな。冷えているトマトがあった、これを切っておけば良いな。
「正輝、お帰り。これ、何人で食べるつもりなの?」
どうも出し過ぎたようだ。心春の助言に従いホーンラビットの丸焼きはマジックポーチの中へと戻って行った。クリームシチューも一杯ずつついだ後に、鍋ごと戻しておく。
「そのウエストポーチはどうしたのかしら?」
「そのことも含めて報告するから、温かいうちに食べよう」
まずは、マジックポーチが出てきた一日目の岡山ダンジョンの話から始めよう。
「なんやそれは!Cランクダンジョンの十五階層と二十階層の宝箱が、銀と金やて!」
「ヤッパリ魔石は麟瞳さんのお陰だったんですね」
「全然役立たずじゃなかったんだ。誰かさんはずっと役立たずって言ってたけどね」
「なんや心春、ワイに文句があるんか?」
「いえいえ、別に何もありませんよ。ねえねえ正輝、結局買取り金額はいくらになったの?」
「マジックアイテムだけで一億四千五百万円、そのうち俺の貰ったマジックポーチが一億だ。しかもオークションに出品すればどれだけの値が付くか想像できないらしい」
「一億!何でそんなに高額なんや?」
「これな、容量がデカくて時間経過がないんだ。料理も昨日麟瞳のお母さんが作ってくれた物なんだ。料理は熱々だし、トマトは冷え冷えだっただろ」
「麟瞳さんはそれで納得したの?余りにも金額が違いすぎないかしら?」
「それは俺も言ったんだけど、他の二つのマジックアイテムの方が自分には魅力的だと言って聞かないんだ。悪いからリュックを押し付けてきたよ。マジックバッグは持ってて困ることはないだろう。皆に相談せずに決めてしまったが良いよな?」
「正輝さんはリュックの中にドロップアイテムを入れるの大変そうだったし、替わりがそれなら文句は出ないでしょう」
「ねえねえ、マジックアイテム以外の買取り金額は?」
「百万円を超えたよ」
「なんやて、ワイらの四倍以上になるんか?Cランクダンジョンやろ?」
「さっきから悠希は驚いてばかりだね。麟瞳の破壊力の凄まじさには私も驚きしかないけど…………凄いね!」
まだ、探索一日目の話しかしてないんだけど…………。
「次の日にDランクダンジョン、更にその次の日にEランクダンジョンとFランクダンジョンを一緒に探索したんだけど、本当に凄かったよ」
もう内容までは良いかなと思いながらサラっと流した。
「ねえねえ、どう凄いのか詳しく教えてよ」
心春は儲け話が大好きなようで、根掘り葉掘り聞かれた。
「麟瞳って、ここを出て行ったらぶっ壊れちゃったね。勿論良い意味で言ってるのよ」
「アイツは能力を隠しとったんやろ」
「悠希さん、どうやって隠すんですか?麟瞳さんのお陰でイロイロと手にしてきたことに感謝しないといけないわ。今後をどうしていくか話をしないと………」
報告も終わり、今後の話に話題も移った。皆が大絶賛の夕飯も全て食べ尽くしてしまったから、タッパに入ったフルーツに桃のジュースでも飲みながら話をしよう。
「今後のことなんだけど、探索者協会に求人を出して、パーティメンバーを斡旋してもらうことができる制度があるらしい……………」
夜はまだまだ長い。皆でしっかりと話し合いをしよう。
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