第25話 吉備路ダンジョン群での買取り

 自転車で探索者センターに戻って来た。まずは刀と薙刀をチェックしてもらう為に武具店を訪れ、問題ないとのことで一安心し、いつも通りクリーニングだけしてもらった。その後、買取りの受付に行き順番を待った。すぐに呼ばれて、受付窓口でいつものようにカゴの中へドロップアイテムを入れていく。ここに来る前に綾芽のマジックポーチに全て移しておいたので、今日は綾芽に任せておこう。


 全てを出し切るのにかなりの時間がかかる。大量に出て来るドロップアイテムに受付嬢は驚いている。最後にはマジックアイテムまで出て来てあたふたし出した。面白い対応ありがとうございます。


 思っていた通りしばらく待ってから受付に呼ばれる。そしていつも通り別室へと移動させられた。


 部屋には年配の女性が座って待っていた。


「吉備路ダンジョン群の探索者センター支部長の西湖美鈴さいこみすずです。わざわざお呼びしてすみません。こんなに大量のドロップアイテムと立派なマジックアイテムを見たのは、ここでは初めてですので少し確認をさせて下さい」


 名刺を渡されて、ソファーに座る。


「最初にマジックアイテムですが、何処で入手したかお聞きしてもよろしいでしょうか」


 取り敢えず綾芽に任せる。何事も経験だ。


「スライムのダンジョンのボス部屋で鉄の宝箱が現れて、その中に女性用のブーツが入っていました。次に野菜や果物を投げて来るダンジョンのボス部屋でも鉄の宝箱が現れました。その中の物が料理道具のような物です。最後にコウモリのダンジョンのボス部屋でも鉄の宝箱が出て、ゴーグルみたいな物が入っていました。以上です」


 良く言えました。綾芽はダンジョンの名前は覚えていないようだ。まあ、正式名称は僕も知らないがな。


「どれもFランクダンジョンの宝箱ですか?流石龍泉様ですね、魔石も完全ドロップですか?」

「そうです、すべての魔物が魔石を落としました。小さくて拾うのが大変でした」

「あのー、僕の事知っているんですか?」

「はい、岡山県の探索者センターの支部長は皆知っています。救世主として有名ですよ」


 確かにこの前偉い人は知っていると聞いたけど………。


「救世主って大袈裟ですよね」

「いえいえ、全然大袈裟ではないです。不人気ダンジョンだと探索者の呼び込みが大変なんですよ。岡山ダンジョンの中里がポーションの実績と宝箱からマジックアイテムが出たことを宣伝に使って徐々に探索者が増えてきていると言ってました。勿論龍泉様の事は言ってないですよ。で、今回うちのダンジョンも宝箱からマジックアイテムが出たことを宣伝に使えます。ありがとうございます」


 確かにここは人気が出そうに無いダンジョンだ。でも五重ダンジョンは季節によって多少ドロップアイテムも変化するらしいからまた来たいけどね。


「では買取りの内訳を伝えます。北河さんお願いします」

「龍泉様の受付担当になりました北河亜美きたがわあみです。よろしくお願いします」

 

 ここでも担当ができてしまった。


「まず魔石ですが、ここのFランクダンジョンはボス以外は一律一個20円です。これが1,248個ありましたので24,960円になります。そしてボスの魔石ですが一個50円で3個ありましたので150円です。合わせて魔石の合計で25,110円です。次に野菜と果物のドロップ品ですが、ジャガ芋が一個20円で188個で3,760円です。玉葱が一個20円で165個で3,300円です。トマトは傷んでいる物は買取りできません。傷んで無いものは一個50円で46個で2,300円です。桃も傷んで無いものだけ買取りさせていただきます。一個200円で42個で8,400円です。パイナップルが一個500円で97個で48,500円です。そしてスイカが一個で1,500円です」

「龍泉様、野菜と果物のドロップ品が多いんですが、どうしてかお聞きしていいですか?」

「その前に確認なんですが、傷んでいるもの以外は全部同じ品質なんですか?鑑定でそういうことも分かるんですか?」

「北河さん、鑑定の結果はどうでしたか?」

「全部同じでした。鑑定すると名前と食用可と出てきました」

「大半が魔物との戦闘で得た物なんです。ミニトレントモドキが投げて来る物をグローブでキャッチして収納をすると魔物が消えた後でも残るんです。この法則は岡山ダンジョンで見つけました。ドロップ品と見分けることが出来るのなら持って帰りますよ」

「いや、全部同じ表示になるので見分けはつきませんね」


 食べ物だから、もしもがあったら危険だよね。全部持って帰ろうかな。


「でしたら、傷んだ桃を私が食べてみます。それで大丈夫なら安心ですよね」

「じゃあ僕も食べます」


 傷んだ桃がカットされて出て来た。刃物で切るよりかぶりついた方が美味いんだよなと思いながら口にする。甘くて美味しい、何個でも食べられそうだ。


「普通に美味しいです。いや、かなり美味しいです」


 西湖さんの太鼓判も出たので大丈夫そうだ。まあ食用可と出ているんだから食べても害は無いだろう。


「最後にマジックアイテムです。ブーツには素早さアップの効果が付いていました。買取り価格が15万円になります。ゴーグルには暗視の効果が付いています。これも買取り価格が15万円になります。調理道具はジューサーミキサーです。不壊の効果が付いていて魔石で動きます。これが買取り価格10万円になります」

「その調理道具は、どの位の大きさの魔石を使えば良いんですか?」

「今日沢山ドロップしたもので大丈夫です。使う頻度にもよりますが、一個で十日は持つと思います」


 初めて魔石を持ち帰ることになるな。綾芽と相談して買取りしてもらう物を決めた。


「マジックアイテムは全部持ち帰ります。それと20円の魔石を10個と野菜と果物は20個ずつ持ち帰ります。スイカも持って帰ります。あと傷んだ桃とトマトも持ち帰ります」

 

 今回はかなり細かく注文をしたので大変だっただろう。


「お待たせしました。合計75,370円の買取り金額から税金分の15パーセントを引いて64,065円になります。こちらが買取りの内訳になります。よろしければサインをお願いします」

「カードに入金でお願いします。三万円を僕のカードに残りを妹のカードに入れて下さい」


 ということで食材は僕の収納に、それ以外は綾芽のマジックポーチに入れた。後は武器ケースの封印をしてもらって着替えのバッグを受け取り、更衣室で着替えてセンターを後にした。


 レンタサイクル店で自転車を返した後、晩御飯を駅前の洋食屋で食べて電車で帰った。家に着いたのは八時半を過ぎた頃、お疲れ様でした。因みに洋食屋ではミックスグリルという鶏唐揚、トンカツ、ハンバーグの三種盛りにケチャップスパゲティーとキャベツの千切りが山盛りの定食を食べました。とても美味しかったよ。


 

 

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