第18話 報告と買取りと反省会、そして晩御飯
武具店を出た後は練習場でストレッチをしてから買取り所へと向かう。いつも通り整理券を取って順番を待つが、相変わらずここのダンジョンは順番待ちが長い。やっと順番が来て受付窓口へ、今日もラッキーなことに一之瀬さんが担当してくれる。ついでに、今日の十六階層でのナンパの事も報告しておく。
「ナンパして来たのはどんな方でしたか?」
「見るからにチャラそうな五人パーティでした。多分お兄ちゃんの装備の映像に映ってますよ」
パーティリーダーの綾芽がそう言うと、一之瀬さんが是非映像を見せて欲しいと言ってきた。今女性の探索者から苦情が多数寄せられているらしい。
映像を見せるために別室へと移動する。
部屋には村上さんもやって来た。部屋のテレビを使う許可を得て、十六階層のナンパの場面の映像を流す。
「お恥ずかしながら、苦情が沢山出ていたんです。この映像は提出していただけますか。被害に遭った女性に確認を取りたいので」
「はい、勿論です。村上さんのスマホにでもデータをコピーしましょうか」
その場で映像をコピーしながら、買取りもお願いする。魔石とお肉と毛皮そして角がドロップした。綾芽のマジックポーチからどんどん出てくるドロップ品を見て、村上さんと一之瀬さんの表情が固まっていく。査定をよろしくお願いします。
映像のコピーも終わり飲み物をいただきながら待つこと15分で、一之瀬さんが帰ってきた。
「倉敷ダンジョンのレコードが出ました」
開口一番がこの言葉である。ちょっと興奮している。
「ではいつも通り魔石からいきます。頭突きラビットが一個50円で5個なので250円です。ホーンラビットが一個80円で12個で960円。ビッグラビットが一個100円で10個で1,000円です。続いて角無しウルフが一個100円で257個ありましたので25,700円で、角有りウルフが一個150円で25個あり3,750円になります。更にスモールボアが一個100円で13個で1,300円。ラッシュボアが一個150円で6個ありましたので900円になります。魔石の買取り金額が合計で33,860円です」
魔石だけで三万円越えだ。お肉の買取り金額を聞くのが怖くなってきた。
「次にお肉です。ラビット系はどれも100グラム100円で合計20キログラムなので20,000円です。ウルフ系は100グラム80円で208キログラムなので166,400円になります。スモールボアが100グラム150円で10キログラムありますので15,000円そしてラッシュボアが100グラム180円で5キログラムで9,000円です」
この時点で《桜花の誓い》の五人は口を開けて呆然としている。まだ続きがあるぞ。
「続いて毛皮です。ホーンラビットの毛皮は一枚500円で2枚で1,000円です。ビッグラビットは一枚800円で1枚で800円。ウルフ系の毛皮は一枚1,000円で合計59枚ありましたので59,000円です。最後にラッシュボアの皮が一枚2,000円で1枚で2,000円です。更に今回は非常に珍しい角のドロップ品がありました。ホーンラビットの角が一本10,000円で2本で20,000円。ウルフの角が一本15,000円で4本で60,000円になります」
「角は単価が高いですね。何に使われるんですか?」
「主に薬として使われています。魔力が込められていて効果が凄いらしいです。すみません、詳しくは知らないんですが、今も研究が続けられているらしいです。では、この中の何を買取り致しましょうか」
皆で相談して好きなお肉を一つずつ持って帰ることにした。
「スモールボアの2キログラムの肉を4個と、ラッシュボアの2キログラムの肉を2個持って帰ります。残りは買取りでお願いします」
今回は2キログラムのドロップが多かったがもっと小さい固まりもあった。ボア系はお肉が美味しいと評判なので出来るだけ持ち帰ることにした。
「お待たせ致しました。合計367,860円の買取り金額から税金分の15パーセントを引いて312,681円になります。こちらが買取りの内訳になります。よろしければサインをお願いします」
《桜花の誓い》のリーダーは綾芽だぞ。僕じゃあない。
「綾芽、サインをしろ。お前がパーティリーダーだろう」
呆けていた綾芽が戻って来た。
「現金にしましょうか。それともカードに入金しましょうか」
「どうしようお兄ちゃん」
「現金を持つのも危険だろう。カードにしとけ。それよりこの中からパーティ費をどれくらい取るんだ」
「そんなの決めてないよ。どうしよう」
「じゃあ300,000円を6人で分けて一人50,000円で残りは真琴に矢の代金として渡せば良いだろう」
「じゃあそれでお願いします」
ということで皆のカードを渡して入金してもらった。
「村上さん、あのナンパ野郎達のことお願いします。報復も怖いのでその辺も考慮して下さい」
「分かりました。厳重注意を与えておきます」
ということで着替えてファミレスに向かいましょう。
ダンジョンからファミレスに移動する間、五人娘は興奮して大きな声で話し込んでいる。
「そんなに儲けた話を大きな声で喋らないの」
「いつもと一桁違うからね。興奮するなという方が無理だよ。お兄ちゃん、本当にありがとう」
「皆で頑張ったんだから、お礼はいらないよ。僕は別に興奮するなとは言ってないからな。儲け話を大声でするなと言ってるんだ」
ファミレスに着いてもまだ興奮は続いている様だ。ドリンクだけでなくデザートまで注文している。おいおい、晩御飯食えるのか?
「綾芽、お前はパーティリーダーなんだからちゃんと反省会を始めろ」
いつまでも始まらないので、ついつい口を出してしまった。
「ゴメン、ゴメン。じゃあ今日の攻略を振り返ってみよう」
やっと始まった反省会はそれぞれに良かった点と良くなかった点を出し合い、どうすれば改善できるかを真剣に話し合う。《百花繚乱》に在籍していた時にはなかった光景を、昨日と同様に少し羨ましく感じる。次にパーティを組んだ時には見習いたいと思う本当に良いパーティだ。
「お兄さん、今日の映像私達にもコピーしてもらえませんか。映像を見ながらだともっと的確にどうすれば良いかが分かると思うので」
「昨日のものと合わせて綾芽に渡すようにするよ」
昨日の映像もいるかなと思ってコピーをとっておいて良かった。映像は反省するのにとても役立つ。高い装備を買って良かったよ。まあ、Aランクダンジョンの探索のために買ったんだけどね。
「昨日のウルフ肉もありがとうございました。すぐにステーキにして食べてみました。美味しかったです」
真琴は倉敷に住んでいるので晩御飯に間に合ったようだ。
「私はステーキよりもデミグラス煮込みウルフハンバーグが美味しかったよ。癖になりそうだよ」
「ボク達は今日の晩御飯にステーキを出してくれるそうです。楽しみです」
な、なんだと、山吹はボクっ娘だったのか?なかなかやるではないか。桃と山吹は県北出身なので寮生活をしているそうで、昨日の肉を食堂のおばさんに渡して女子寮の皆で食べられるようにしてもらったそうだ。
「じゃあ今日の肉は買取りにした方が良かったのか?」
「いえいえ、ボアのお肉は美味しいらしいですから、ボクも是非食べてみたいです。今後の攻略意欲も上がるかもしれませんし、それに寮の友達にも恩が売れますしね」
山吹は前向きな意見を言ってきた。
「私も今日ステーキの予定ですが、二キロもある大きい肉の固まりだったから食べきれないですよね。デミグラス煮込みウルフハンバーグのレシピが欲しいな〜」
遥の意見に皆が賛同して、煮込みハンバーグのレシピを綾芽が母さんから聞いて後日渡すことになった。《桜花の誓い》は、これから倉敷ダンジョンがホームになるので、肉の良いレシピは共有しようという話で盛り上がっていたよ。色気より食い気なんだね。そして最後にもう一度感謝されてお開きとなった。
家に帰るとすぐに綾芽が煮込みハンバーグのレシピを聞いていた。ということでお先にお風呂に入らせてもらおう。
今日もゆっくりと風呂に入って疲れをとった。入れ違いに綾芽も風呂に入ってから晩御飯のようだ。良い匂いがしてくる。今日はホーンラビットの料理だ。
「ウサギ料理なんて分からないから、鶏料理みたいにしてみたよ」
テーブル上には大皿からはみ出しそうなウサギの丸焼きと内臓の串焼き、それに野菜サラダとインスタントのポタージュスープ。勿論僕のご飯は大盛りです。
父親はビールのおつまみに最高と言いながら串焼きを美味そうに食っている。僕はまずモモ肉を切り分けてもらって食べてみる。美味い!いや、美味すぎるぞ。ハーブの香りも良いがサッパリとした印象を受けた後から、肉自体の旨味が遅れて来る。今まで食べたことのない味わいだ。串焼きも内臓独特の匂いが少なく、塩で味付けされ美味しい。ウルフよりも肉が高い訳だ。昨日の煮込みハンバーグも美味しかったが、断然ウサギ派になった。
「お母さん、滅茶苦茶美味しいよ。これもレシピお願い」
「桃と山吹は寮生活だから料理するの無理だろ。家に呼んであげて、綾芽が料理して振る舞えば良いんじゃないか?」
「お兄ちゃん、物事には無理なこともあるんだよ。お母さん、今度友達呼んで来ても良いかな?寮生活の子にも食べさせてあげたいんだ。今日の料理は滅茶苦茶美味しいからね」
「それは別に構わないけど、普通の鶏の丸焼きと作り方一緒だよ」
「一緒でも断然ウサギの方が美味しいと思うよ」
他の部位も食べたけど、どれも美味しかった。今日はお肉が残らなかったので晩飯ストックは無しになった。骨があったけど全部で二キログラムあったんだよね。皆お腹が一杯になったよ。
寝る前に綾芽に明日も朝練をするのか聞かれたので、基本的に毎日することを伝えておいた。最後にステータスを確認したが変わりはなかった。では、おやすみなさい。
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