第17話 再び《桜花の誓い》と倉敷ダンジョンへ

 昨日は晩御飯の後、前日の寝不足の為どこの小学生だというくらいの超早寝を決めた。そのお陰か今日は四時半にスッキリと起床できた。台所で母さんに朝の挨拶をして、ホーンラビット肉を渡しておく。晩御飯期待してます。

 

 昨日と同じ時間に家を出て、同じ時間にダンジョンに到着。受付で手続きを済ませて、練習場で体をほぐしながら今日の各人の課題の確認をする。昨日と違うのはダンジョンに入る前に六人のダンジョンカードを重ねてパーティ登録をすること、その後転移の柱で六階層に転移した。ここから今日は攻略を開始する。


 七階層まではラビット系、ここでは二人組になって課題を持って順番に討伐していく。盾とアタッカーのペアは大盾で攻撃を受け止めるのではなく、攻撃をいなして魔物の体勢を崩しそこをアタッカーが仕留める練習をする。組み合わせを交互に替えてどちらの組み合わせでも連携できるように練度を高める。


 僕と弓術士の真琴との組み合わせは僕が真琴をガードしながら後方から魔物を弓で仕留める練習をする。ハンドサインで合図を送りタイミングを合わせて矢を射る。大きい声を掛け合うとラビットは逃げてしまう。何度も繰り返すうちに呼吸も合ってきた。


 八階層からはウルフ系、今日は左右から綾芽と遥がそして正面から僕が仕掛ける。三匹のウルフとエンカウント、まず開幕の一射を真琴が射てから三人で仕掛ける。最初の弓矢の一撃で一匹撃破したので残りは二匹だ。僕と綾芽に向かって突っ込んできた。一匹の相手はお手の物、危なげなく討伐終了し、ドロップ品を集めて集合する。


 昨日の真琴との連携もハンドサインを決めて声をかけずに対処する。繰り返し練習することで練度が上がる。最多で五匹の群れだ、何度か後方にそらすこともあったが、タンクが冷静に対処している間に手の空いたアタッカーが後方に素早く戻ってとどめを刺す。


 一旦十一階層のセーフティーゾーンで休憩を入れる。ここからは新しい戦法を取り入れる。ラビットエリアで練習した盾とアタッカーの組み合わせで左右から接近して真ん中は僕と真琴の組み合わせで対処する。


 ラビットよりも動きの速いウルフが相手だけに、最初は戸惑うこともあったが回数を熟す度に洗練されていく。攻撃のバリエーションは沢山あるに越したことはない。


 二つの戦法を軸に何度も戦闘を繰り返して十六階層の転移の柱に到着した。ここでお昼ご飯にする。この階層からはボア系の魔物が出てくる人気エリア。セーフティーゾーンも人が多い。スペースを見つけてご飯を食べる。


 ご飯を食べた後にトイレに行く。ダンジョンでは時間が経つと全てのものが吸収されるが、セーフティーゾーンだけは例外になっている。高ランクのダンジョンではテントを持ち込んで泊まり込んで攻略しているパーティもあるらしい。セーフティーゾーンであれば安心して泊まることができる。Dランク以上のダンジョンではセーフティーゾーンの端に簡易トイレが設置されている。これで安心して用を足すことができる、ありがたいことだ。しかし、このダンジョンは人気があるから人が多く、トイレの待ち時間も長い。やっと終わって戻って来るとパーティメンバーが絡まれていた。


「ねえ、良いじゃん。一緒に行動しようよ。俺達こう見えて結構強いんだよ」


 ナンパである。テンプレ中のテンプレ、キングオブテンプレだ。


「ゴメン待った」

 

 とりあえず間に入る。


「なんだお前は」

「彼女達の連れだな。君達こそ誰なんだ」

「お前は邪魔なんだ。どっか行けよ」

「迷惑行為をしているのは分かっているんだよな。これ以上続けるようなら報告しなくちゃならなくなるぞ」


 今時こんな奴らもいるんだね。ダンジョン法はちゃんと習っているだろうに。


「あなたたちこのバトルスーツ見て分からないの。この人Aランカーだよ。さっきから何度も言ってるでしょ。私達教えを受けているんだよ」


 Aランカーと聞いてビビったのか悪態をつきながら退散していった。弱いぞお前達、キングオブ雑魚の名称を送っておこう。


「ええっと、今日はこの後一人で行動しないようにしておこう。ああいう奴らは執念深いからね」


 ということで気をつけながらも、もう少し攻略を進めよう。


 スモールボア、ラッシュボア、ワイルドボア、ビッグボア、このダンジョンに出てくるボア系の魔物だ。


 スモールボアは普通の猪よりも小さいが突進力はなかなかのもの。


 ラッシュボアはスモールボアをそのまま大きくした見た目で破壊力はかなりのもの要注意だ。


 ワイルドボアは大きな牙が特徴で、その牙を使ったかちあげの攻撃は殺傷能力が高い。


 ビッグボアは軽トラぐらいの大きさがあり、盾があっても受け止めたらはじき飛ばされる。回避をしながら少しずつ体力を削るしかない難易度の高い魔物だ。


 このボア系エリアはタンクにかかっていると言っても過言ではない。


「ここは桃と山吹に期待しているから。スモールボアは盾で受け止めれば良いが、それ以外は受け止めるよりもいなした方が無難だろう。ビッグボアは絶対に受け止めないように、大怪我に繋がるからね。桃と山吹は判断が的確にできるようにしていこう。基本は受け流すように考えていればいいと思う」


 十六階層の攻略を開始する。最初のエンカウントはスモールボア、小さいが突進は鋭い。桃が黒盾で受け止めて遥が槍でとどめを刺した。順調な滑りだし。


 スモールボアを何匹か屠った後にラッシュボアと接敵、迫力が段違いに増した。山吹が銀盾でいなし少し態勢が崩れたところを綾芽が足元を狙って払う。左前脚にダメージを与えて機動力を無くして眉間に真琴の矢が刺さって討伐完了。


 何度かラッシュボアとスモールボアを相手にして経験値とお肉を貯めて今日の攻略は終了した。


 今日はワイルドボアとビッグボアに会うことは無かった。何よりも無事に探索を終えることが出来て安心した。


 十六階層の転移の柱からダンジョンの外へ、まずは武具店に行きましょう。

 

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