第2話 パーティ追放
「今回の失敗の原因は何だと思う?」
リーダーの正輝が皆に問う。久しぶりのパーティでの反省会だ。今までは小さな失敗は沢山あったが、攻略に失敗するという事がなかったため問題にされていなかったが、今回は余程堪えたのだろう。
「そんなの分かりきってるやん。足手まといがおるからやろ」
「四人での攻略では無理なのかもしれないわ。魔物の数がBランクダンジョンとは大違いでしたわ」
「そうよね、役立つ人をあと二人は入れないと厳しいと思うわ」
皆が僕のせいにして現実逃避している。どう考えても実力が足りていなかった。勿論僕が一番役に立っていなかったけど、高額な帰還石を自腹で用意したのは僕だし、また挑戦できるんだから力を付けるしかないよね。
「麟瞳、お前はどう思っているんだ」
正輝が僕をまっすぐ見ながら聞いてくる。
「今回は実力が足りていなかった。個々の能力もそうだけど、パーティとしての戦い方も練度を上げていかないと次回も厳しいと思うよ」
「何を偉そうに言うてんねん。お前が邪魔やったんやろ」
「確かに僕は戦闘では貢献できていないのかもしれないけど、皆のサポートは出来ていたと思うし、自衛は出来ていたと思う」
「何がサポートや。何もされてないわ。自衛できていた言うてもお前がおるだけで気が散るんや」
悠希は僕を全否定してくる。
「和泉はあと二人必要と言ったけど、ボス部屋には六人までしか入れないぞ。どうするんだ?」
「麟瞳さんにはAランクダンジョンは無理だと思うわ。《百花繚乱》は今後もSランクダンジョンまで攻略するんだから、此処までだと思うわ」
「それは麟瞳にうちをやめてもらうと言うことか?」
「その通りよ」
和泉も同じだね。僕を入れ替えれば何とかなると思ってるんだな。
「心春はどうなんだ」
「私も麟瞳は厳しいと思うわ。とにかく魔物の数が厄介よ。私を守る盾役が欲しいわ」
自分の事しか考えてないよね。狙われないように工夫しようとか考えないの。
「麟瞳、君の意見も参考にさせてもらうけど、俺も皆と同じだ。君にはAランク以上のダンジョンは厳しいと思う。パーティを外れてくれないか」
三人が僕を不要と思ってるんだから正輝もそうなるよね。正輝はいい奴なんだ。皆が僕への当たりを強くする中で、唯一声をかけてくれていた。正輝がいるから僕は七年間もこのパーティにいることが出来たんだと思う。その正輝が苦しそうに声を出している。ここが潮時だな。
「わかったよ。ここを出て行くよ。これから新メンバーと頑張ってくれ」
「へええ、何で追放なんだよとか言わへんのやな。悪あがきして、もっと寄生するんかと思うとったわ」
どんだけ僕のことを嫌ってるんだよ。そんな言葉要らないよね。
「パーティの装備品はちゃんと置いて行くんやで。盗まんようにな」
「ああ分かってる。自費で購入したものだけ持っていくよ。因みに帰還石は自費で購入したものだけどお金は皆で出してくれるんだよね。百万円だけど」
「なんでやねん。帰還石なんか無くても帰って来れたわ」
「いや、ちゃんと百万円はパーティ費から出すよ。今回は用意してくれていて助かった。ありがとう」
リーダーの正輝が言うと、他の三人は苦々しそうに顔をしかめている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この後はどうするんだ?」
次の日、パーティハウスを出立するときに正輝が聞いてきた。他の三人は当然見送り無し。
「取り敢えず実家の岡山に帰ってから考えるわ。岡山はCランクダンジョンしかないし、最初はソロでボチボチ頑張ります」
「すまんな麟瞳、こんなになってしまって」
「遅すぎたくらいだよ。実力が無いのは本当だしな。正輝には苦労をかけたな。岡山に来ることがあったら連絡をくれ、案内するよ。まあ七年間も居なかったからだいぶ変わってるだろうから、僕も勉強しとくよ」
「ああ連絡するよ。あとお前は努力をし続けていたよ、誰よりもね。いい仲間見つけろよ。頑張れよ!」
苦しいことばかりの思い出しかないけど、《百花繚乱》は僕の青春だったと思う。涙を見せないようにして、大量の荷物の入ったバッグを持ち正輝と別れた。
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