第45話 迷宮攻略準備 ⑤
ある程度の修理が終わったアルゴー号に戻ってきた。
「あー、素晴らしい造形、素晴らしい手触り、素晴らしいですわー!!」
「ちょっとサンソン、ずっとあの調子なんだけど……良いの?」
「良くはないな」
ヤトアは義足に夢中だ。まあ、遺物オタクに最古の遺物を与えればドラゴンのコレクター癖も相まってこうなる事は想像に難くない。とはいえ、いつまでも浮かれているのは困る。
「ヤトア」
「はいなんでしょうか見てくださいこの輝き、素晴らしいと思いませんこと?」
「ヤトア」
「ええ、素晴らしいですわよね!!」
名前を呼んで少しずつ近づく。
「ヤトア」
視線がようやく義足からこちらに向いた。
「ガーラ・ガーラを攻略するための作戦を今から話す。前回もそうだったように【老害】の行動を完全に予測する事はできないが、対応策を考えておく事はできる。まず今回は自分も攻撃に参加する」
「「ダメ(ですわ)!!!」」
息ぴったりだ。
「あのねえ!! サンソン気付いてないから言うけどサンソンなんて僕たちからしたら小指でちょっと小突けば死ぬくらいの耐久性しかないんだよ!!! 死に体の相手に触れるのも許し難いのになんで攻撃に参加なんてさせると思うの? ねえ、そんな風にするなら僕にも考えはあるよ? 行っとく? 永久に出られない箱庭に行っとく?」
「残念ながら自分は鍵を持っているから永遠に閉じこめられる事はない」
「あー!! そうだった!!!」
改めて思う。あの時パンドーラの一族に恩を売っておいて良かったと。
「ワタクシも反対しますわ。息を吹けば死ぬような身体でどうやって戦うと言いますの? ワタクシ達が作った道を通るのではいけないのですか」
「今回ばかりは難しいだろう。相手が相手で、規模が規模だ。おそらく100万単位で敵がいる」
「100万の敵でも蹴散らして見せますわ。文字通りに」
「きっとヤトアなら可能だ。だがそうじゃない、自分の予測が正しければガーラ・ガーラの軍勢が尽きる事はない。一度に100万消しとばして初めて届く。1人蹴る間に3人復活したらキリがない」
「それは、そうですけれど」
「加えてヤトアの戦闘スタイルは短期決戦向きだ。長期戦には向かない。そもそも、今回はその長期戦をしないために自分が動く」
「お祖父様の炎、ですわね?」
「もしかして、自分は自分で思っているより隠せていないのか?」
「血縁でしてよ。いくら紛れても間違わない、いくら漂白されてもはっきり見える。そういうものですわ」
「血か、それはどうにも誤魔化しようがない」
いっそオープンにしてしまおうかとも考えるが、まあそれは今考えることではない。
「炎? ああそういえばサンソン火を吹いてたね。あれ何?」
「龍皇アジヤーカの炎を譲り受けている。それを使えば地下空間の100万でもまず間違いなく消し炭にできる」
「ふーん、そうなんだ。でもそんなことをしたら地上が大変なことになるんでしょ? サンソン自分で言ってたじゃん」
「そう、だからそれを押さえ込む用意が必要になる。そのためには地上と地下が繋がっていなければ良い。分断してしまえば地上への被害は出ない」
「ん? それって」
「お前の出番ということだよ。ランド」
「また僕に無茶させる気だ!! 前回のも大変だったんだよ!?」
「なんだできないのか、それとも嫌なのか?」
なんだそのキョトンとした顔は。そこから一気に緩んだな。
「嫌なもんか。すっごく嬉しいんだ。ランドが僕を頼ってくれてすっっっっっごく嬉しい。たとえそれが無理なことでも、たとえそれで死にかけても、僕はやるよ。絶対にね」
「あ、あの、ワタクシは!! ワタクシは何をすればよろしくて!!?」
そんなに焦らなくてもきっちり役割を果たしてもらう。
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