逢魔が時横断歩道
仲仁へび(旧:離久)
第1話
通学路を歩いて着いた。
学校帰りの私は、横断歩道で踊る。
その踊りは、怪物たちへ捧げる祈りだ。
白黒の横断歩道の上、驚くほど人通りの少ない田舎の道は、怪異が発生しやすい代わりに、こういった活動がしやすくて良い。
舞台を整えるのも簡単で、誰かの悲劇や不安や悲しみ、そこを行きかった人間の感情が怪異を生み出すのと同じように、異能にも力を与えてくれる。
飛び跳ねる。
舞い踊る。
軽やかに弾む。
黒と白の小さな舞台で。
背景には真っ赤な夕日、入れ替わるように訪れようとする夜の闇。
見えない場所には怪異たちの気配。
じっとこちらを見つめて、襲い掛かる機会をうかがっている。
「でも、大丈夫」
私は気持ちを、伝える。
悲しい怪異たちに、踊りを通じて。
この私だけの力を使って、整えられた舞台の上で。
「もう苦しまなくてもいい」んだと。
犠牲の連鎖も、不幸の連鎖も、訪れさせない。
白黒の横断歩道、逢魔が時の時刻。
怪異を観客にしたこの世と別の世の境界線で、ステップを踏んで。
強く思いを、描く。
たくさんの人の感情が混ざり合って
「こちらへおいで」と言っているけれど。
「ごめんねそっちにはいけないんだ」
私は、そうやって返すよ。
淡く光る粒が舞い上がり、天空へと向かっていく。
一つ一つのその中に、歪に心がねじまがってしまった怪物が閉じこめられていた。
――もう誰かをそっちに引きずりこまなくてもいいんだよ。
私は、踊りをやめて静かにそれらを見送った。
逢魔が時が過ぎ去って、夜が静かに訪れる。
逢魔が時横断歩道 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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