過去から未来へ

月片夏月

新生活と、思い出

桜舞う季節、広くなった部屋を見渡してみる。

部屋の真ん中に大きな影を落としているのは、

思い出が積み重なったが故に変わり果てた小さなぬいぐるみ。

もらった時はすごく大きく感じたそのぬいぐるみは、

いつの間にかすごく小さくなっていた。

鮮やかな茶色だったはずのそれは色褪せて、昔の写真のようだった。

しばらく見ていると今までの、思い出が走馬灯のように、駈け巡った。

何となくおいていくのも申し訳なく思えて手に取った。

最後の段ボールにそっと入れて、荷造りを終える。

さぁ出発の時間。

「いってきます!」

先に出発した荷物を見送って、大きな声で家族に最後の笑顔を贈る。

新生活、大学生になった私は初めての一人暮らし。

キャリーケースと使い慣れた駅をでる。

ありがとう、今までの私。


 そうして初めての景色へと歩を進める。

新しい拠点はドキドキとワクワクを一緒につれてきた。

先に送った荷物を開け、クマのぬいぐるみを手に取る。

新しい家でもよろしくね、クーちゃん。

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過去から未来へ 月片夏月 @natuki_T

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