異世界勇者レイカの贖罪

狛咲らき

第一章 大罪を犯した1日目

現実は残酷に

 ──何が起きた?


 過呼吸になりながらも、直前の出来事を想起する。


 ただあたしは、一緒に写真を撮ろうとしただけだったのに。

 撫でられた頭にも、重ねてくれた左手にも、優しく叩いてくれた肩にも、まだ彼女の感覚が残っているというのに。


 ふたりしかいない部屋の中で、たった一瞬。その一瞬で現実は想像を遥かに超えた地獄を見せたのだ。


 バラバラに離れてしまった腕と、それとは対照的に綺麗に並ぶ脚。けれどもそれらをつなぐ身体はどこにもない。


「なんで……なんでっ!」


 再び、彼女と目が合った。

 凹んだマットレスに埋まり、生気を失った生首が、救いを求めるように少女を見つめている。


 だが少女はただ茫然と立ち尽くすばかり。血生臭い空気が辺りを漂い始めるも、鼻をつまむことすら考えられない。


 現実な訳がない。これは夢に違いない。


 そんなことばかり考えて、変えられない今を無かったことにしようと必死に頭の中で足掻くことしかできないでいた。


 足掻いて、足掻いて、足掻いて。

 そして遂に、少女の心が壊れる音が聞こえた。



 ──こうして勇者・増見玲花は、一国の王女を殺したのだった。

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