『無理やりキスされた』ときみが泣いた。
鈴乃
『無理やりキスされた』ときみが泣いた。
「無理矢理キスされた」
と君が泣いた。
十年来の付き合いの中でもなかなかのニュースだ。
なお、その大罪人には渾身の右を食らわせたらしい。
「好きな人がいるのに、来週告白するって決めてたのに」
もうキスできない! と君は叫んだ。
赤くなった口元は少し切れている。
多分今強く目元を拭ったように、何度も擦って洗ったんだろう。
いやどんだけ乙女だよ。
キスの有無なんて言わなきゃばれない。
そんなこと確認する奴の方が少ないし、実際自分みたいに、皮膚の接触だとしか思ってない例もあるんだから。
でも君がこの世の終わりみたいに嘆くから、ない知恵と人の心を振り絞ってなぐさめようとしたんだ。
「唇の表皮は2週間で新品になるらしいよ」
クッションが飛んできた。
それ以来ラインも電話も返事がない。
なるほど認識を改めよう。キスとはおおごとだ。
メールでも謝った。家にも行った。
皮膚の接触ひとつで親友を失うなんて、なかなかにぞっとしない。
2週間後、玄関に君が立っていた。
「好きだ。キスしろ」
した。
(終)
『無理やりキスされた』ときみが泣いた。 鈴乃 @suzu_non
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます