(二)-9

 ティムは会場の一般人の中に妙な動きをしている人間がいないか、改めて見回した。そして皇居とは反対側に立っている背の高いマンションも見上げた。

 マンションの住人に対しては、演説中はなるべく部屋にいないように、また仕事などでどうしても在室しなければならない場合には窓を開けないようにと警察から通達が出ていた。そんな通達など出しても、犯罪者には無視されるだけで、ほとんど無意味だ。

 しかし窓は左右の二棟ある建物の両方とも、皇居側の窓は解放されていなかった。これは日本の警察が優秀だからなのか、日本人の几帳面さなのか、それとも冬の寒さが厳しいせいなのか。


(続く)

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