心中歌

@mohoumono

心中歌

綺麗な一番星 動いたら流れ星

はたまた飛行機

それはもう電気代一ヶ月分の夜景

チープに聞こえる それで良いから

自転車でさかのぼり

吐く息は白く握る手は四つとも冷たい

登るほど冷たくなる 奥歯を噛み締める

慰めにもならないなら流す価値はない

松明が消えたならどう歩いて行ったら良い

前後左右不明 目の前が崖であれ

その望みは叶った

たらればを言った

僕が医者だったら

病気を治した

喜んだけれど泣いていた

次の日死んだ

なら、綺麗なものを見せよう

たらればを言った

僕が芸術家だったら

残そうとした

喜んだけれど泣いていた

次の日死んだ

なら、面白くあろう

たらればを言った

芸人だったら

笑わせようとした

喜んだけれど泣いていた

次の日死んだ

たらればを言った

たらればを言った。

たらればを言った。

たらればを言った。

あと一回だった。前後左右不明

蝶々よ羽ばたいてくれ

たらればを言わなかった

窓から見る、桜も、花火も、紅葉も

イルミネーションも小指大しかなかった

けれどどんなたらればよりも綺麗だった。

彼女は泣かなかった。

その代わり一言「やっと気づけた。」

僕も気づけた。

僕らに残されたのはあと一日

さかをのぼった。

夜空を見た。

一番星、指差したのは、飛行機

そよ風が吹いたから流れ星

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心中歌 @mohoumono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る