「も……申し訳ありませんでした……」


 私が何度目かの謝罪を口にした後、リュシアン様はようやく髪から手を離してくれた。


「お前に言葉で注意しても無駄らしいな。幽閉室に入って反省しろ」


「え……っ、また幽閉ですか……?」


「不満でもあるのか。本物の牢獄に入れてやってもいいんだぞ」


 リュシアン様は冷たい目で私を見据えて言う。リュシアン様の言う通り、王太子に薬物を盛るなんて本来なら牢獄に入れられるべき罪。


 幽閉で済ましてくれるのは相当な温情なのだ。


「わかりました……。幽閉室で反省します……」


 しょんぼりしながらそう言うと、乱暴に腕を掴まれてそのまま幽閉室に連れて行かれた。


 扉が閉められ、ガチャリと鍵がかけられる。


 私は扉の前で、遠ざかっていくリュシアン様の足音を悲しい思いで聞いた。



***


 そういうわけで幽閉室に入れられて三日。


 私はふかふかのベッドの上で毛布にくるまって、ひたすら時が経つのを待っている。


 最初はこの部屋には毛布しかなく、固い床で縮こまって寝ていたのだけれど、今はベッドがあるのでありがたい。


 以前、幽閉室で眠ると体が痛いとこぼしたら、リュシアン様に罪人のくせに贅沢を言うなと怒られてしまった。けれど次に部屋に入れられた時は、部屋の真ん中にやたらふかふかしたベッドが用意されていた。


「リュシアン様、早く会いたいわ……」


 今回の幽閉期間は一週間。使ったのが毒物ではなく睡眠薬だったことで、期間を短めにしてくれた。


 けれど一週間もリュシアン様と会えないのは辛く、私は開かない扉をひたすら切ない思いで見つめた。



「おい、ジスレーヌ。起きてるか」


 突然扉の外から響いた声。私は飛び起きて扉の前に駆けて行く。


「リュシアン様!? はい、起きてます!」


「開けるぞ」


 リュシアン様は冷たい声でそう言うと、扉を開けた。三日ぶりのリュシアン様の姿に私は歓喜する。


「リュシアン様! どうしてこちらへ!? もしかして幽閉期間を短くしてくださるのですか!?」


「そんなわけないだろう。図々しい奴だな。お前がちゃんと反省しているのか見に来ただけだ」


 リュシアン様は不機嫌な顔で言う。


 リュシアン様は、大抵の場合、幽閉期間が半分を過ぎると部屋まで来てくれるようになる。


 駄目駄目な私がちゃんと反省しているのか確認するためらしい。それでもリュシアン様に会えることには変わりないので、私は嬉しくてたまらなかった。



「いいか? 勘違いするなよ。本当に反省具合を見に来ただけだからな。寂しくて来たとかじゃ絶対ないからな!」


「わかっております! ジスレーヌはここできちんと反省しております!」


 リュシアン様に怖い顔で釘を刺されてしまったので、私は慌てて宣言した。

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