14.王宮では リュシアン視点③

第68話

 ジスレーヌが幽閉されて、もう三週間経つだろうか。俺は落ち着かない気持ちで部屋にやって来たトマスに尋ねる。


「トマス、ジスレーヌはまだ戻ってこないのか」


「来ませんよ……。幽閉期間は一ヶ月だとリュシアン様も知っているでしょう」


 トマスは呆れ顔でこちらを見る。


 わかっている。わかっているけれど、一ヶ月がこんなに長いとは思わなかったのだ。


「私はジスレーヌ様がリュシアン様から離れていてくれたほうが安心しますけどね……」


 トマスは溜め息交じりに言った。


 トマスはジスレーヌが俺にしょっちゅう毒を盛ったり刺そうとしたりしてくることを知っているため、彼女をよく思っていないのだ。



「それにしても大丈夫ですかね、ジスレーヌ様。裁きの家に入った人間は大抵幽閉中か、帰ってから数ヶ月後に亡くなってますけど」


 何気ない口調でそんなことを言われ、耳を疑った。幽閉された者が亡くなる?


「亡くなるとは一体どういうことだ」


「えっ、リュシアン様知らなかったんですか? あの屋敷に入れられた罪人は、幽閉以上の罰を与えられるわけでもないのになぜかどんどん弱っていって最終的には亡くなるんですよ。だからこんなに貴族たちから恐れられているんです」


「な……っ!? そんな話は聞いてないぞ! ただの気味の悪い噂のある屋敷としか……」


 屋敷が呪われているという話は聞いていた。しかし、そんなものくだらない噂だとしか思えなかった。


 ジスレーヌが魔女の幽霊が出るなんて話をしていたので、呆れつつオレリアから幽閉された人間の資料をもらってきたが、そこには彼らが亡くなったなんて記述どこにも書かれていなかった。


 一体どういうことなのだ。危険はないと思ったからこそ、ジスレーヌを裁きの家に入れると決めたのに……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る