第36話
***
しばらく部屋に留まったまま、ベアトリス様のことを考えていた。
答えてくれなかったので真実はわからないけれど、もしも予想通り彼女が無実の罪を着せられて幽閉されたとしたら。
過酷な取り調べを受け、幼い子供とも引き離され、最後にはお屋敷で弱ったまま亡くなって。あんまりではないだろうか。
そんな仕打ちを受けながらも彼女はお屋敷の中から人助けを続けていた。幽霊になった今だって、人を憎んでいるようには見えない。
私は彼女のために何かしてあげたくなった。
もう死んでしまった人間相手に何ができるかはわからない。けれど、私には彼女の姿が見えるのだし、何かできることはあるのではないだろうか。
「うーん、たとえば、幽閉期間が終わるまでにお屋敷を綺麗にしておくとか……?」
ベアトリス様はこのお屋敷に住んでいる……住んでいるといっていいのかわからないけれど、ずっとここにいるようだし、現在の埃を被って庭も荒れ放題のお屋敷よりも、綺麗なお屋敷のほうが心地良いのではなかろうか。
もっといい方法がありそうだけれど、今は思いつかないのでとにかく思いついたことをやってみよう。荒れ放題になっているお庭も草むしりをしたらきっとすっきりするはずだ。
私は早速、お屋敷の中から掃除を始めることにした。
早速倉庫に行って、箒とバケツ、雑巾を数枚持ってくる。一階の応接間から、順番に部屋を回って掃除していった。
箒で床を掃いて、床を拭いて、家具を磨いて。そうしているうちに、どんよりとしていたお屋敷の空気が、澄み渡っていくような気がした。
午前中いっぱいかけて応接間と食堂と厨房を掃除した私は、ぐったりと疲れ切っていた。応接間のソファに腰掛けて、少しの間休憩する。
「よし! 続きやらないと!」
わざと声に出して気合を入れる。
気分転換も兼ねて、午後はお庭に出て、荒れ放題の草を何とかすることにした。
玄関を出て、初めて庭の中へ足を踏み入れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます