第28話

 不思議に思いながら指示通りサンドイッチを作る。


 幽霊はサンドイッチが食べたいのだろうか。それとも、サンドイッチを作ることには何らかの深い意味が? 理由のわからないまま黒パンを半分に切って、その中に切った野菜を挟む。


(あ……結構おいしそうにできたかも)


 少なくともいつもの料理のように、生焼けだったり、焦げていたりはしない。ただ切って挟んだだけだから当然なのだけれど。野菜は少々切り方が雑とはいえ、挟んでしまえばよくわからない。


「ええと……これでいいでしょうか?」


 尋ねると幽霊はこくんとうなずいた。表情は変わらないけれど、心なしか満足そうな顔をしているように見えた。


「あの、食べますか? 幽霊って食べ物を食べられるのかな。それとも、これ、何かに使うんですか?」


 幽霊はこの問いには首を横に振る。不思議に思いながら、私はサンドイッチを持って食堂に向かった。


 移動中、幽霊はなぜかずっとついてきた。テーブルにつき、ぱくりとかぶりつく。


「おいしい!」


 黒パンのサンドイッチはとてもおいしかった。硬くてパサパサしている黒パンが、中に野菜が入っていることでみずみずしく感じる。


 何より、料理が成功するのは初めてで、感動が余計においしく感じさせた。


 私が声を上げたのを見ると、幽霊はまるで用事が済んだかのようにふっと消えてしまった。


(もしかして、私が作れそうな料理を教えてくれただけ……?)


 思えば私は料理の難易度なんて気にせず、好みでメニューを選んで毎回失敗していた。あの幽霊はそんな私に呆れて、私レベルでも作れそうなレシピを勧めてくれたのかもしれない。


(やっぱりいい人よね、あの幽霊……?)


 私はなんだか不思議な気持ちになりながら、サンドイッチと幽霊のいた場所を交互に眺めた。

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