6.魔女の影
第24話
四日目の朝。
リュシアン様と話したことで大分元気になった私は、ドレスの洗濯に挑戦してみることにした。
ベランジェの家にいるときはメイドがいつもきれいに洗ってくれていたので、やり方は全くわからない。
けれど、書庫で見つけた本を参考に何とかやってみようと思う。
一昨昨日までに着たドレスを持って洗濯部屋まで向かう。室内の台にドレスを置いてから本を開いて洗濯方法を調べた。
なるほど。この大きなお鍋みたいなものに服とお水を入れて、石鹸を入れてからかき混ぜればいいのか。意外と簡単そうなので、ほっとした。
鍋にドレスを入れ、そばにあったバケツに蛇口から水を汲んで、ドレスの上からかける。後は石鹸を……と辺りを見渡したところで、石鹸がないことに気づいた。
「どうしよう……」
小さな棚があったので中を開けてみたが、中は全て空っぽだった。仕方がないので水だけで洗うことにする。大鍋に手を入れてじゃぶじゃぶ洗った。これで汚れが落ちているのだろうか。
三枚のドレスをやっとのことで洗い終えると、ぎゅっと絞った。
途中で布が避ける音が聞こえたような気がしたけれど、大丈夫なのだろうか。多分大丈夫だと自分に言い聞かせた。
おっかなびっくりでドレスを抱え、洗濯室の奥の庭につながる扉を開ける。それから二本の木に綱を張って干した。
(これでいいのかしら……?)
うまくいった自信は全くないのだけれど、何とか洗うことはできた。ちょっとした達成感を抱えて洗濯室に戻る。
入った途端、ひんやりとした空気を感じた。嫌な予感がして前方を見ると、そこにはまたあの長い髪の女性がいた。
女性はやはり表情のない顔で、じっとこちらを見ている。
「あ、あの……」
口をぱくぱく動かしていたら、女性はまたふっと姿を消してしまった。体から力が抜けてしまい、床にへたり込む。
「あれはやっぱり魔女なのかしら……?」
もし彼女が魔女、ベアトリスなのだとしたら、私の前に現れて一体何を伝えたいのだろう。
「今日はこのくらいのことで部屋に閉じこもったりしないわ……!」
何しろ私は昨日リュシアン様と通信して、とても元気なのだ。それに、夜にはまたリュシアン様がお話ししてくれる。魔女らしき女性の姿を見たくらいで、怯えるものか。
私は気合を入れて、洗濯室を後にした。
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