第5話

 裁きの家について考えているうちに、お屋敷が見えてきた。


 全体を蔦が覆って、いかにも周りを拒絶するような雰囲気を纏っている。


 先程から降り出した雨と相まって余計に薄暗く寂しく感じた。私は今日から一ヶ月間、ここで一人で過ごさなければならない。


 馬車から降ろされ、リュシアン様の部下の方に案内されて屋敷の門まで向かった。屋敷の庭は草が伸び放題で、心細さを強めさせた。


 私が少し歩みを止めると、部下の方は何も言わなかったが、警戒するように鋭い目で私を見つめた。私は慌てて歩き出す。



 門の所まで来ると、部下の方は鍵を使って扉を開け、私に中へ入るよう促した。


 言われた通り中に入ると、扉に手をかけたまま部下の方は言う。


「ジスレーヌ様には一ヶ月間ここで過ごしていただきます。屋敷での生活については、中にある手紙を読んでください。一週間に一度監視係が来ますが、その時以外は誰も訪問してくることはないのでそのつもりで」


「わかりました」


「庭には好きに出てもらって構いません。しかし門より先には行かれないようになっています。それでは一ヶ月後に迎えに来ますので、どうぞ静かにお過ごしを」


 リュシアン様の部下は淡々と説明すると、躊躇なく扉を閉めた。


 たぶん、あの人は主であるリュシアン様に毒を盛った私を軽蔑しているのだろうなと思った。



 試しに庭に出て一歩足を踏み出してみる。


 説明された通り、見えないバリアが張られているように、一切先へは進めなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る