第二章
少女の夢 ~微睡み~
「――我が友よ、我が友よ!」
何者かに肩を揺さぶられて、魔の者の少女、エルエッタは目を覚ました。
少女が、ゆっくりと身を起こす。まだ眠気でかすむ目を擦りながら、彼女は、ぼうっと目の前を見つめた。
そこには、背が高く美しい少女が立っていた。襟首から靴の先まで真っ白な衣装は、均整の取れた体型の彼女を寸分の狂いもなく包み込んでいる。やや短めに切り揃えられた金色の髪は、仄暗い地下の大部屋には不釣り合いな輝きを魅せていた。
その少女は、純白の手袋を身に着けた自らの手で、少し乱れたエルエッタの髪の毛を直しながら、彼女の顔を覗き込んでいた。
白馬の王子様――彼女の風貌を形容するならば、その言葉がぴったりと当てはまる。
白装束の少女の瞳は、煮えたぎる憎悪の炎を宿している。彼女もエルエッタと同様、魔の者だ。
真っ白に輝く歯を見せて、春風のように爽やかな笑顔を浮かべながら、白馬の王子様はエルエッタを気遣う。
「やあ、お目覚めだね?」
「あら? 私、眠ってしまっていたみたい……」
エルエッタは椅子から立ち上がる。
なにか……とてつもなく嫌な出来事があったような気がするのだが……気のせいだろうか?
寝起きでふらつく足取りを整えながら、エルエッタは白馬の王子様に、目覚めの挨拶を返した。
「おはよう。シャミィ」
白馬の王子様――シャミィは、くすりと笑うと、エルエッタの言葉をやんわりと否定した。
「今は、こんばんは、だよ。友よ、そんなに寝ぼけるなんて、君は、よほど楽しい夢でも見ていたのかい?」
「ええ、ちょっとね……」
楽しいとは程遠い夢だが、親友を不安にさせたくないエルエッタは、適当にはぐらかした。
しかし、それなりに長く、深い付き合いになるシャミィには、彼女の胸中に察するものがあった。だが、気心が知れた仲だからこそ、それ以上、踏み込むことはしなかった。
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