第16話

 ジョゼフはすぐにロード王国へと送り返されることとなった。今回の一件に関与した疑いのある者たちはルカに捕らえられ、そしてアーティスト王国はロード王国側へと抗議文を送った。


 ジョゼフはロード王国に帰国後すぐに隔離され幽閉されたという。彼はもう二度と、呪いを解くチャンスもなければ幽閉が解かれることもないだろう。


 私は、その知らせを聞いて小さくため息をついた。


「大丈夫か?」


 ルカが心配そうに私の隣で、私の手を握っている。


 私はルカの肩に首をもたげると言った。


「えぇ……ただ、呪いって何なのかしらって思って……」


 ロード王国の王族に引き継がれる呪い。


 私は呪いの説明を聞いた時、ジョゼフの呪いを解くのは自分だと、自分の役目なのだと全力で彼を愛する努力をした。


 そして、呪いを一度は解いた。


 けれど、ジョゼフの呪いはまた復活した。


 ルカは、私の肩を抱き、静かに言った。


「呪いってものが何なのかは分からないが……おそらくはちゃんと愛されれば解ける、そこまで恐れるものではないのだと俺は思う」


 その言葉に、私は確かにそうなのだろうなとこくりとうなずいた。


 相手を敬い、大切にし、愛しんでさえいれば解ける呪い。


 それは普通に生きてさえいれば、誰でも得られるものなのかもしれない。


 国王という立場ならば、おそらくは普通の人よりももっと得やすい物だろう。


 けれど、ジョゼフは得られなかった。いや、得られるチャンスを自ら棒に振ったのだ。


「きっと、神様は私を憐れんでチャンスをくださったのね」


 その言葉に、ルカは肩をすくめると言った。


「それを言うなら、神様は俺に同情したんじゃないか?」


「え?」


 小首をかしげる私に、ルカは優し気な微笑みを向けて言った。


「エレナ。君という愛する人を失った俺を、神様がきっと哀れに思ってくださったのさ。だから、君を得られるチャンスをくれたのだと、俺は思うよ」


 私はその言葉に顔を赤らめ、うつむくと、勇気を振り絞って顔をあげて言った。


「神様は私にチャンスをくださったのね。お前の真実の愛を向ける相手は……ルカだって。だから……」


 声が小さくなってしまう。けれど、私はルカの瞳を見て言った。


「ルカ……愛してるわ」


 恥ずかしくて顔が、茹るように熱くなる。


 ルカの顔も、見る見るうちに真っ赤に染まっていった。


「エレナ……」


 お互いに顔を真っ赤になってしまった。


 ルカは私をそっと抱き寄せ、大きく息を吐いた。


「神様に感謝する。愛してるエレナ。大好きだ。絶対に幸せにする」


「私も、神様に感謝するわ。ルカ……私も大好き」


 ぎゅっと抱きしめあう二人の姿を、真実の愛という言葉が好きな神様がのぞいていたとかいないとか。


 時間が戻った少女は、本当の真実の愛を、その胸に抱くことになったのであった。




 おしまい



★★★★


 最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

 読んでくださった皆様に感謝です。


 作者 かのん








 

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真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。 かのん(飛び犬のアイコンの女) @kanonclover

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