第13話
アーティスト王国ではハロウィーンの頃、貴族たちの間では仮面舞踏会が開かれる。それは盛大なものであり、貴族たちは自分のこだわりを持って仮面を作り、それをつけて過ごすのだ。
仮面舞踏会の最中は上下関係なく舞踏会を楽しむことが決まりとなっており、年間数組がその場で運命の出会いを果たして結婚している。
たまに大きく爵位の違うカップルが生まれるのもこの時期であり、ハロウィーンの奇跡としてアーティスト王国では相手に婚約者がいるとか不当な結婚でない限りは受け入れられている。
自国との違いに驚かされることも多いが、私にとってアーティスト王国の伝統や仕来たりというものは好ましい物ばかりだった。
私は白鳥を模した仮面をつけ、ルカはそれと対になるような黒鳥の仮面をつけている。装いに合わせてドレスも決めており、それぞれ白と黒の衣装を身にまとっている。
「エレナ。安全だとは思うが、あまり俺から離れるな」
その言葉に、ジョゼフがまだ見つかっていないことへの心配がうかがえて、私はルカの言葉に素直にうなずいた。
「えぇ。もちろん。ルカがいない時でも一人にはならないように気を付けるわ」
私の言葉にルカはうなずき、二人は舞踏会の会場へと足を踏み入れた。
会場内は仮面をつけた貴族たちで溢れ、いつも以上に煌びやかな印象を受ける。
今回の舞踏会は、貴族の身分などは隠して行われるものなので、皆が気軽に話をし、そして酒をたしなんだりダンスに興じたりとそれぞれ楽しんでいる。
「お嬢様。一曲お相手願えますか」
ルカにそうかしこまってそう言われ、私はくすりと笑うとその手を取った。
「えぇ。もちろん」
二人は軽やかにダンスを踊る。こうして踊っていると本当にルカの婚約者になったのだなという実感がわいて、私は温かな気持ちを抱いた。
ルカと一緒ならば、これからも幸せになれる気がする。
そう思い、ダンスを一曲踊り終えるとルカは私に休憩しながら待っているように伝え、飲み物を取りに向かった。
私は近くのテラスへと夜風に当たりに出ると、その心地よさに目を閉じた。
ダンスを踊ったことで火照った体には、夜風がちょうどよい。
すぐ近くに人がいたから私は気を抜いてしまっていた。不意に後ろに気配を感じて、ルカが帰ってきたと思って振り返ると、そこには、銀色の仮面をつけた男性が立っていた。
私には一瞬でそれが誰かが分かる。
仮面をつけていても、立ち振る舞いで気づかないわけがない。
「……何故」
口からこぼれた言葉に、男性は優し気な視線をこちらに向けると言った。
「迎えに来たんだよ。僕を真実に愛してくれる愛しい人よ」
私は恐怖から身動きが取れなかった。
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