第12話
ロード王国からは父に対して何度か手紙が届いたが、私にその手紙の内容が知らされることはなかった。父は笑いながら”大丈夫、大丈夫”と言っていたが、それが言葉通りの意味ではないであろうことは明確だった。
また、ジョゼフが子爵家の令嬢を何の理由もなく監禁し暴力を振るっていたことが明らかとなり、ジョゼフは廃嫡とすることが決まったとの知らせを受けた時には、体が震えた。
しかもだ、ジョゼフ殿下は廃嫡が決まったとたんに行方を眩ませたのだという。
「ルカ……きっとアイリーン様だわ。どうして……なんで監禁なんか……」
私の言葉にルカは少し考えると、小さく息をついてから言った。
「俺も、ジョゼフ殿下については調べているところだが……エレナ。おそらくだが、ジョゼフ殿下はエレナ同様に前の時間軸の記憶があるのではないだろうか?」
「え?」
ルカの言葉に、私は驚きのあまり言葉を失った。
「け、けど何故……だって、アイリーン様とジョゼフ殿下は私を処刑して、それから結婚したはずよ」
「これは憶測だが、おそらく君を処刑した後に、君が本当は呪いを解いたことにジョゼフ殿下は気づいたのではないだろうか? そうとするならば、君が殿下の呪いを解いた後の、殿下の行動もうなずける」
「え?」
私はその言葉に少し考えた。
「で、でも……呪いは一緒に寄り添って生きていけば解けるものだって……」
「アイリーン嬢はそれが出来なかったのかもしれない。とにかく、ジョゼフ殿下の行方が分からない以上、君に近寄ってこないとも言えない。気を付けよう」
ルカの言葉に私はうなずいたものの、その日の晩はよく眠れなかった。
私はロード王国から本当に逃げてもよかったのだろうか。もしかしたら神様は今度はジョゼフ殿下と幸せになれるようにと時を戻してくれたのだろうか。
そんなことを考えてしまった。
けれど、神様に向かって思ってしまう。
私は自分を死に追いやった人間をずっと愛せるほど、神経が図太くはない。
神様が時間を戻したというならばと、私はベッドの中で祈るように手を組んで呟いた。
「ジョゼフ殿下との縁は、私にはもう不要です。ご厚意には感謝しますが、ごめんなさい」
この世界に神様がいるならば私の声をちゃんと聴いてほしい。そう思いながら私は夢の世界へといざなわれていった。
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