第8話 「ポイント振り分け」

 私は早速ステータスウィンドウからポイント振り分けの項目へと移動させる。

 すると何度も見たことがあるはずのステータスポイント振り分けの表示なんだけど、何かが違った。

 ゲーム序盤でまだパーティーを組んで戦闘に出る前の状態では、ポイント振り分けの項目はヒロインしかいじれなかったけど、戦闘訓練などでパーティーを組めるようになったら攻略対象のステータス値やスキルレベルのポイント振り分けもプレイヤーが行なうことが出来るようになる。

 乙女ゲームと称している『ラヴィアンフルール物語』は、恋愛シミュレーションに加えてRPG要素も備わっているのが特徴でもあった。

 だから戦闘でパーティーを一緒に組めば組むほど、その親愛度は上がりやすくなる。

 そしてパーティーを組んで戦闘するからには当然その仲間となる攻略対象も、能力値のポイントを操作して自分好みにカスタマイズできるというやつだ。

 戦闘バランスはさすがに本格アクションゲームとかに比べると見劣りするけど、それでもキャラへの愛着もあってかボイス入りの戦闘はとても楽しかったのを思い出す。


「でもこれ、ちょっとだけ項目が変わってる? モブだから?」


 ヒロインとその仲間になる攻略対象達のステータス画面の項目は全員同じ。

 ゲームをする人間なら当たり前の知識になるわけだけど。

 

【HP】

 体力のことで、これが0になると戦闘不能になる。ゲーム内では死亡は存在しないけど、この世界でそれも同様かどうかは怪しいところよね。十分気を付けないといけない数字。もちろんこの数字が高いほど生存率も上がる。

 ヒーラーのサラは基本的にこの最大値が低くて、タンク役でもあるウィルはこの最大値が仲間になるメンバーの中で最も高く設定されてる。


【MP】

 魔力のことで、魔法使いなんかはこれを消費して魔法を使用する。魔法をメインで戦うサラやルークはこの数値が高め。逆にウィルは低め。


【物理攻撃力】

 読んで字の如くなんだけど、攻撃系の戦い方をするエドガーがパーティー内でダントツに高い。ウィルも筋力強化系のスキル持ちだからこの数値は高め。


【物理防御力】

 そのままの意味で、敵の物理攻撃を受けた時にHPがどれだけ減っちゃうか、ってやつ。サラは魔法タイプだからやっぱりここの数値は低い。プレイヤーによってはサラの生存率を上げる為に、HPや物理防御力にポイントを振る場合がある。


【魔法攻撃力】

 魔力による魔法を使って攻撃した時の数値。サラ、エドガー、ルークが最大値高めで、普通にレベルが上がった時もここの数値が特によく上がりやすい。


【魔法防御力】

 敵から魔法攻撃を受けた時のダメージ量に影響する。ウィルは基本的に物理防御型だけどタンクとしての役割もあるからか、魔法攻撃力がゴミの割にここの数値は人並みに上がる。


【筋力】

 レベルが上がった時に、物理攻撃力や物理防御力の上昇値に補正がかかるやつ。筋力値が高いと重い武器も装備出来るようになる。


【知力】

 レベルが上がった時に、魔法攻撃力や魔法防御力の上昇値補正。


【抵抗力】

 状態異常系の攻撃だったり属性魔法への抵抗力に関するもの。この数値が高いと状態異常にかかりにくくなったり、弱点属性の魔法すらダメージを緩和させることが出来る。


【素早さ】

 攻撃の速さだったり、敵の攻撃を見極めて防御したり、魔法の詠唱時間を短縮したりって感じ。


【運】

 どのゲームもどれくらい影響力があるのか体感したことないけど、結構大事だったりする。私は体感したことないけど。具体的に「運が高かったからこうなった!」みたいな、そういう具体的な効果を目にしたことないのよね。ゲームだから敵がレアアイテムを落とす確率? クリティカル率? 命中率? まぁこれも高くて損することはない項目だけど、私は先生攻略を目的とした以外でここにポイントを割り振ったことはない。


 ここまでが全キャラ共通の項目なんだけど、ここにさらに見たことのない項目が追加されている……。

 何度もこのゲームをプレイしたし、ポイント割り振りでも悩みながら画面と睨めっこするから見落とすなんてことはあり得ない。


【存在感】……この数値が高ければ高いほど、モブスキルの効果が上昇する。周囲の人間からより認識されにくくなる。モブスキルオンの間は常時発動状態。ただし『抵抗力』と『運』の数値が高い相手には認識されることがある。


【スキル・ステルス】……この数値が高ければ高いほど、モブスキルの効果が上昇する。『存在感』と異なり、完全に相手から見えない状態になること。姿はもちろん足音も完全に消すことが出来る。姿が見えないだけで攻撃が当たればダメージを受ける。モブスキルオンオフ状態に関わらず、数秒〜数分間の使用時間が設けられる。一度使用すると数秒〜数分間クールタイムが設けられる。数値が高くなるほどステルス時間は長くなり、クールタイムも短縮される。


 モブならではの隠しステータスですか? 『ステルス』はともかく、この『存在感』って項目は明らかにどんなゲームでも見たことがない項目というか。モブだからこその能力というか。

 まぁ私は別にバチバチの戦闘狂じゃないし、そんな前線に立って戦うことなんてモブだからないだろうし。

 戦闘面にポイント振っても旨味がなかったりすると正直思ってる。

 この先どうなるかわからないけど、授業では確かに戦闘訓練はあるわけだけど。でもそれは生徒の能力を測る目的であって、当然生徒の中には戦闘向きではなくサポートタイプとか、そういう形で活躍する生徒もいる。

 だから一概に「戦闘が強ければ優秀」ってわけでもない。騎士になるのが目的だから戦闘が強い方がそりゃいいんだけど。卒業後は作戦部とか、諜報部に配属希望すれば行けるわけだし。個々の能力次第なのよね。

 最初から配属別にクラス分けすりゃいいんだけど、そうすると幅広い分野の育成をしているアンフルール学園のクラスの種類がとんでもない数になってしまう。

 ゲーム設定的にそこまで深く考えて作られたのかどうか知らないけど、少なくとも二次創作をする人間はそういった学園のシステムも考察しながら構築した上で創作活動をしていた。


 私が表立って戦闘することもなければ、ラスボスと戦うことなんて絶対にない。

 モブスキルしか持たないE・モブディランがアンフルール学園に入学出来て、なおかつA組に配属されたということは、モブにはモブなりの特化した能力があるからこそ……だと思う。 

 だったら私はモブとして、モブの能力を遺憾なく発揮出来るように能力値を高めた方がいいのでは?


 今日割り振れるポイント数は3ポイント。夕食作りの功績ね。

 そして現在の『存在感』の初期値は12、『ステルス』はそもそもスキル扱いだからポイント1割り振れば習得することになる……。

 なんだかんだレベルが上がれば他の項目も少しずつ上がるわけだし、ここでの手動振り分けはこの2つに割り振っておくかな。これまでプレイしてきた中で、モブが出張ってくることなんてなかったわけだし。

 物語にどう影響するかわかったものじゃない。

 もしかしたら私がモブとして最強になれば、先生の明るい未来が切り拓けるかもしれないし。


 私はとりあえずエドガーといった、元々初期値の高いヤツ対策として『存在感』に1ポイント。

 そして本当の意味で役立ちそうなスキル『ステルス』に2ポイント割り振った。

 初期値高い系相手にもっと割り振った方がいいと思ったけど、説明文に「数値が高ければ認識されなくなる」とは書いてないのがどうしても気になったから。

 あくまで「認識されにくくなる」だけ。それじゃ心許ない。エドガーに対してどれだけ数値を上回れば認識されなくなるのかわからない以上、ポイントを割り振るメリットが私の中では見出せない。

 それなら確実に見えなくなる『ステルス』の方がいくらかメリットが感じられる。大事な局面で使えば確実に相手から認識されなくなるんだから。使用時間とかクールタイムとか制限はあるけれど、上手く使いこなせば強い能力になるかもしれない。


 スキル『ステルス』に割り振った1ポイントでスキル習得、残り1ポイントで『ステルス』のポイント値が1に。

 次からこのスキルを使用する毎に、使用回数が一定値に達するとレベルアップする。

 それに加えて一日の最後に、その日得たポイントをステータス能力『存在感』とスキル『ステルス』に割り振っていけば、それなりに成長速度が上がるでしょう!


 さて、なんか唐突にモブであることを再認識させられたけど。

 自分が生きているこの世界でゲームと同じようなことが出来るのは、なんだか不思議な感覚で面白い。

 A組の中で私はひっそりと息をしながら、先生を愛でる毎日が送れる。

 

 モブ、最高!

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