第11話 王女様との再会
あれ、この黒い馬車……やけに大きくないだろうか?
それに魔術的な結界で覆われているのだろうか。
馬車内の窓から覗いても中の様子が全く見えない。
でも間違ってはいないはずだ。
王国の許可証――王国馬車商会の紋章もある。
それに近くの道路に停まっている魔術が施されている馬車らしき乗り物もない。
いやこれで間違っていたら困るし……念の為、ロイド先輩に確認するか。
ローブの内ポケットから通信魔術を施したタブレットを取り出す。
そして、魔力を込めようとして――赤い髪の女性が降りてきた。どこか洗練された動きでテキパキと動いた。
「シュウ・ハルミントン様、お待ちしておりました」
「あ、はい」
「さあ、どうぞ」
赤い髪の女性はなぜか運転手らしからぬ仰々しさと共に馬車の扉を開けた。
赤い髪の女性はニコッと笑みを浮かべた。
……いや、見惚れている場合ではない。
急がないとアンナとの待ち合わせ時間に間に合わなくなる。
「お邪魔します」
「それでは、快適なお時間をお過ごしください」
俺が乗車する姿をじっと見ていたのだろうか。
赤い髪の女性はお辞儀をしてから、バタンと馬車の扉を閉めた。
●△●△●
薄暗い室内だ。
それに、この薄暗さなんかよりも大きな空間の方が問題かもしれない。
一体、何人乗り合わせているのだろうか。
一体、これから人をピックアップするのか。
いずれにしても本当に時間通りにアンナの元に辿り着くことができるのだろうか。
それだけが問題だ。
いや、もう乗ってしまったのだから、今更後悔したって意味ないかもしれない。
あれ……そういえば行き先についてまでロイド先輩に伝えていたか?
そんな時だった。
「こんにちは」
奥の方から透き通るような声が聞こえた。
「……どうも」
「さあ、こちらまでどうぞ」
「はあ」
なんだかよくわからないが、このような相乗り馬車では座る位置が決まっているのかもしれない。
とりあえず声のした奥へと向かった。
すると見知った顔の女の子が『コ』の字のように配置された中央のソファーに一人ぽつんと座っていた。
白銀の長い髪、ラベンダー色の大きな瞳、色白い肩が露出しているドレスを着た可愛い女の子。
「奇遇ですね、シュウ様?」
「……オフィリア王女」
「ふふふ、こちらへお掛けください」
ぽんぽんとオフィリアは自分の隣へと座るように案内した。
「なんでいるんだよ……?」
「さあ、はやく!出発の時間です!」
オフィリア王女は急かすような声と裏腹に……とびっきり綺麗な笑顔を浮かべた。
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