第7話

 美術の時間、隣同士の似顔絵をスケッチすることになった。

 大体、中学生の描く似顔絵なんて、鼻がでかくて、口のしわがクッキリ描かれ、猿みたいで、かわいい、かっこいいなんてことは絶対ないものだ。


 僕は全神経を集中した。彼女の美しさを最大限引き出す似顔絵を描こうと思った。

 

 真剣なまなざしで彼女を見つめる。こんなにまっすぐに見つめるのは初めてだ。

 彼女も僕を見つめ、似顔絵を一緒に描く。

 お互いを長い時間見つめ合い、スタイラスペンシルをタブレットに走らせながら、描き進めていく。


 「できた!」

 絵を描くことに自信はなかったが、自分なりに彼女への想いを、最大限表現することができたと思った。

 お互い描いた絵を、相手に向けて指先でスワイプする。


 自分のタブレットに、桂木さんの描いた絵がスルッと送られてきた。

 自分の似顔絵を見てみると……


 ――あーそうだよな、こんな感じだよな――

 口に出さず、心の中で思った。ブサイクな顔がそこにはあった。


 しかし彼女に僕の絵を渡したとたん、彼女の表情はみるみるうちに紅潮していった。

「え? これが……私?」


 手を口にやり、一瞬驚いた表情をしていたが、自然と顔が緩んだんだろう、満面の笑みを浮かべてくれた。

「かわいい! 私こんなにかわいくないよ。でも、ありがとう」


 顔を赤くして、笑顔で答えてくれた。心の中で「ヨシッ」と叫んでいた。

 気に入ってくれたのだろう、僕の想いは十分に伝わったかもしれない。

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