月夜に願いを

NEURAL OVERLAP

第1話

霧野きりのさん、もうお昼の時間ですよ。いい店見つけたんで、一緒にランチ行きませんか?」


「いや、僕はこれでいいよ」

 カタカタと音を立てた。


「ああ、またそれですか。本当飽きないですね、体壊さないように気を付けてくださいよ」


 研究所のみんなが部屋を出たところで、私は包装されたカップを握り、給湯室に向かった。


 おもむろにビニール包装を解き、「ここまで開ける」の線までフタを開く。

 湯沸かしポットのボタンを押し、トポトポとお湯を注ぐ。

 フタを閉めて、両手でしっかり支えて、部屋まで持ち帰る。


 この一連の儀式は僕にとって、とても崇高すうこうな行為だ。


 それはこれから食するものが、「タイムヌードル」だからだ。

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