②S鳥さんは女王(の卵)様

若島和

プロット

◯参考作品(それぞれ「嗜好の元」程度に)

『ガチ恋粘着獣』

『可愛そうにね、元気くん』

『刺青』



◯世界観

 現代日本、東京都市部の私立高校。普通の共学。季節は秋、文化祭直前。

※SMをテーマにしていますが、性的なシーンは一切出さないつもりです。



○主要キャラクター(全員高校一年生)

真白ましろ冬雪ふゆき 男

「ほんっと勘弁してくれよ。まあ、やるけどさ……」

「違う。佐鳥さんは許してくれたんじゃない。佐鳥さんのせいでこうなったんでもない。俺の、そういうところが、そういうところを……見つけて、必要として、くれたんだ」

 主人公。適度に整えた黒髪、清潔感のある見た目。優等生かつ人当たりも良い人気者。昔から他人を最優先に生き、「人を害さない自分」を意識して目指していたため、「本当の自分はそこまで立派じゃないのに」「自分を真に好むような人がいるのか」という不安に無意識下で苛まれている。所謂「いい子症候群」。こういった内罰的思考により潜在的なマゾヒズムを抱いている。その性癖は唯葉と出会い、ライトなプレイを重ねることで徐々に花開いていく。


佐鳥さとり唯葉ゆいは 女

「あ、えっと、その……ご、ごめんなさい……わたしで良ければ……っ」

「立っていいなんて言ってない。考えて? どうしたらいいと思う? ……いい子。よくできました」

「わたしの恋は、みんなみたいに綺麗じゃなかったみたいだから」

 ヒロイン。学校内でも存在感を放つ儚い系の美少女。澄んだ焦げ茶の瞳、バージンの黒髪はさらさらのボブ。肌が陽の光に弱く、一年中黒タイツとカーディガンを身につけている。性格は内気で口下手。異性にはモテるものの、同性には距離を置かれている。

 本性はサービス精神も兼ね備えた生粋のサディスト。ひょんなことから冬雪をプレイに巻き込み、以降ささやかながら彼を支配下に置くようになる。

 父親は幼少の頃行方不明になっており、家族は母が一人のみ。母は今も昔もSMクラブの女王様を勤めているため家を空けていることが多く、自我形成時は受ける愛情が不足していた。昔から友達の輪にうまく入れなかったこともあり、自己評価がかなり低い。当初は「お母さんのように誰かを喜ばせてあげたい」という願望のもと女王様を目指していたが、本編開始前冬雪を好きになり彼への願望が浮き彫りとなったことで、己のサディストである面を自覚。余計自己嫌悪に陥っている。


弥美川やみかわ華恋かれん 女

「冬雪、ほんとに優しすぎ。そのうちサギとか引っかかっても知らないからねっ」

「あたしのものにならなくてもいい。ただ、誰のものにもならないでくれればよかった……」

「なんでよ! あたしの方がずっとずっとずっとずっと! ずーっと先に、冬雪のこと好きになったのに!」

 冬雪の幼馴染。成績優秀でバレー部のエース、スクールカーストの頂点・クイーンビー。綺麗にカールさせた焦茶の長髪、すらりとした長身。目力が強く近寄り難い雰囲気の美人で、女子たちの憧れの対象。お節介で明るい性格だが本当は冬雪にずっと片想いをしているメンヘラで、現在垢抜けきっているのも冬雪に相応しい自分になるため努力した結果である。彼の隣で誰よりも仲のいい幼馴染というポジションに固執しているが、唯葉が現れその地位が脅かされ始めたことで、徐々に本性を表していく。


片吾かたわれ揺一よういち一乃いちの 男・女

 唯葉の友人の双子の兄妹。兄・揺一は明るい茶髪でピアスをつけたチャラ男風の容姿。妹・一乃はツインテールで低身長の見た目地雷系女子。顔立ちはあまり似ていないが思考や言動が常にシンクロしている。共に帰宅部。唯葉の母が所属するSMクラブ店長の子で、彼女とは昔から仲良くしていた。唯葉の家庭環境や性格を熟知した上で、彼女の幸福を心より願っている。彼女の恋を応援する反面、冬雪が中途半端なことをしないよう日々見張っている。

 実は揺一は唯葉のことが好き。一乃はレズビアンだが唯葉には友情しか感じておらず、「めちゃくちゃな女に振り回されたい」という厄介な性癖を持っている。



◯物語構成

◆全6章構成(計100,000~105,000程度)

◇プロローグ~1章(12,000程度)

 人通りがほとんどないことで、告白を始めとした密め事のスポットとなっている歴史資料室。モブ女から冬雪、モブ男から唯葉、二つの告白が同時に起こる場面から物語は始まる。かなりモテる二人は共に歴史資料室の一番の常連だが、お互いに会話を交わしたことはなかった。

 いつも通り告白を受け流した冬雪は幼馴染・華恋と一緒に帰路につく。話題は明日のHR、文化祭の係決めの話に。華恋はいつもいろいろな雑用を引き受けてしまう冬雪がきっと文化祭委員長も引き受けるんだろうと予想し、彼の身を心配していた。

 翌日、案の定文化祭委員長になってしまう冬雪。彼を補助する副委員長を買って出たのは、なんと唯葉であった。文化祭の出し物は『教室内仮面縁日(ライブ配信付き)』に決まり、委員の二人で予算書を作成することに。本腰据えて仕事ができる環境として、歴史資料室に赴く。

 仕事があらかた片付いた後、冬雪はふと魔が差して一時離席した唯葉のスケッチブックを覗いてしまう。そこには自分によく似た人物が縄打たれている絵が何枚も描かれていた。戻ってきた唯葉は秘密が知られたことで自暴自棄になり冬雪を拘束、縄で綺麗に縛り上げる。

 実は唯葉はサディストで、ずっと冬雪に対し欲望を募らせていたのだと言う。自己嫌悪に陥る彼女だが、『自分』が求められたことに喜びを見出した冬雪は「できる範囲でならプレイに付き合ってもいい」と申し出る。これを発端に、二人のおかしな委員会活動が始まるのだった。


◇2章(23,000程度)

 翌日、華恋と一緒に登校する冬雪に、通りすがった唯葉が話しかけてくる。「昨日はありがと。今日も、よろしくね」通り過ぎていく彼女を見送る冬雪は、突然激しい寒気に襲われる。振り返ると、地雷女然とした女子生徒が凍てつく表情で冬雪を睨んできていた。前方では唯葉がチャラい見た目の長身男に話しかけられている。彼女は彼と会話しながらも周囲を気にする素振りを見せており、どこか萎縮しているようにも見える。

 放課後プレイ前、唯葉から二つの提案がされる。一つ目は「セーフワードを決めること」、もう一つは「今後プレイの中で写真を撮りたい」。後者について、用いるのはwifi機能のないデジタルカメラ。写真は必ず撮った後二人で検閲し駄目なものはその場で削除。残すものはSDカードに保存して鍵つきケースに保管する。カメラ本体と鍵は唯葉が持ち、SDカードは冬雪が持つことで約束が取り纏まった。

 唯葉がカメラを設置しタイマーを設定した上で始める二回目のライトプレイ。手足を拘束された状態で唯葉のところまで歩かされ、ご褒美に彼女の手からお菓子を食べさせてもらう。自分は何をやってるんだと思いながらも彼女に従い褒められることに妙な充足感を得る冬雪。プレイ後二人で一緒に写真を確認しながら冬雪は唯葉に朝見たチャラ男のことを尋ねるが、歯切れ悪く誤魔化すような答えに不信と心配を抱くのだった。

 その日の帰り道、家の近くで殺気を感じる冬雪。振り返ると軽い足音が逃げていく。朝の地雷女が尾けてきているのかもと不安を募らせる。

 数日後の放課後、冬雪が華恋と下校しようとしていると、携帯に唯葉からビデオ通話がかかってくる。画面に映るのは歴史資料室にいる例のチャラ男。「冬雪クン見てる~?w」と煽る彼の背後では唯葉が椅子に縛られ、地雷女にナイフを突きつけられていた。華恋を放り出し歴史資料室に駆ける冬雪。

 チャラ男と地雷男は兄妹だったらしい。チャラ男は「妹は前から冬雪に恋をしている。唯葉を助けたければ俺の妹と付き合え」と無茶な要求をしてくる。返答に悩んだ挙げ句、「君と付き合うことはできるけど、俺は君を好きにならないよ。少なくとも、自分のために誰かを傷つける人のことは」と諭す冬雪。兄妹は大きく頷くと、冬雪にすべてのネタバラシをする。

 彼らは唯葉の幼馴染で双子の片吾兄妹。唯葉の性癖も知った上で彼女を応援しており、冬雪がどんな人間か見極めるためにこんな行動に出たそうだ。呆れる冬雪だが、「真白くんが来てくれて、すごく……嬉しかったよ」とはにかむ唯葉に何も言えなくなってしまう。

 唯葉がロープ類をしまっている時に双子にがっしり肩を組まれる冬雪。「ゆいぴをよろしく」「責任持って幸せにしろよ」と強く言い含まれる。別に彼女とは付き合っているわけじゃない、と否定する冬雪ににっこりと笑いかける兄妹。「「ゆいぴを泣かせたりしたらぶっ殺すから」」


◇3章(20,000程度)

 数週間が経過した。クラスでの文化祭準備は順調に続いており、すでに目処が見えてきている。唯葉は主に美術担当として大活躍。以前よりもクラスに馴染んでいるようだ。

 放課後の歴史資料室でのプレイは少しずつエスカレートしてきている。床に膝をついた冬雪の頭を丁寧に踏みにじる唯葉。プレイが終わってからカメラを確認すると、今しがたの光景は今までで一番綺麗に写っていた。二人どちらからともなく、この画像を互いのスマホに入れて宝物にしようということにする。喜ぶ唯葉は、おずおずと次の日曜日の予定を聞いてくる。「真白くんさえよかったら……わたしのお家、来ない?」

 帰り道、彼女の誘いの意味を考える冬雪のもとに出現する双子。

「次の日曜日はゆいぴの誕生日だよ」「この情報をどうするか」「生かすも」「殺すも」「「お前次第だ」」

 唯葉の家に行くことをなんとなく華恋には言えずに迎えた当日。唯葉の家は手狭なアパートで、家族は家にいないようだ。それはいつものことのようで、誕生日を一人で過ごしたくない唯葉は例年兄妹と共に過ごしていたらしい。プレイをするでもなく、映画を観たり唯葉の手料理を食べたりして、まるで恋人同士のように過ぎていく時間。その中で複雑な家庭環境を打ち明けてくれる唯葉。父親は行方不明、母親はSMクラブの女王様で、昼は寝ているし夜はいない、休みの日もスーパーのパートとして働いている。片吾兄妹はクラブの店長の子供にあたり、昔から支えあってきたらしい。彼らのことを大切そうに語りながらも寂しげな唯葉の表情に胸をざわつかせる冬雪。彼女のためになにかできないかと、「今日は、何もしなくていいの?」と切り出すが、「……真白くんは、したい?」と切なげに問われ押し黙ってしまう。

 自分でも自分の願望がわからず煮え切らない冬雪に不安げに微笑む唯葉。気まずい空気が拭えないまま帰宅時間が近づく中、焦った冬雪は唯葉に誕生日プレゼントのネックレスを押し付ける。唯葉は一頻り喜んだ後で、どこか寂しげに「ごめんね……」と呟いた。いつもの謙遜だと思った冬雪はそこまで気にすることなく家への帰路につくのであった。


◇4章(15,000程度)

 翌日冬雪が登校すると、クラスメイトの異様な沈黙と注目が待ち受ける。唯葉も休みのようで、居心地悪く席に着く冬雪に、華恋がSNS上で起こった出来事を教えてくれる。全く匿名のアカウントが、クラスメイトたちにある画像を送りつけてきたらしい。その画像とは、冬雪と唯葉が宝物にしたはずの、先日のプレイの写真だった。クラスメイトは冬雪は唯葉にいじめられていたのではないか、という説で持ち切りとなっている。否定しようとする冬雪は華恋に止められる。華恋は、写真のシーンが歴史資料室で繰り広げられたものだと理解し、暴力ではないと察した上で、写真を撮って流出させた犯人は唯葉ではないか、と疑問を呈してくる。

「……佐鳥さんがそんなことする理由ってなんだよ」

「独占したかったんじゃないの」

 浮かぶ疑念を否定しながらも昨日の別れ際の唯葉の様子を思い起こす冬雪。手がかりを求めて訪れた歴史資料室は、炎上騒ぎを受け立入禁止にされていた。途方に暮れた冬雪は唯葉を直接電話で問いただすことにする。

 唯葉はやはり画像のことを気に病んで学校を休んだようだ。「わたしのせいで迷惑かけてしまってごめんなさい」と振り絞る彼女。「文化祭のこと、わたしにお手伝いできることは多分もうないと思う。もう、変なことお願いしないから。あなたの前にも現れない……」と一方的に通話を切りブロックしてくる。

 立ち尽くす冬雪の両脇に出現する片吾兄妹。「泣かせたのか」「ぶっ殺したろか?」という言葉と共に、本当に唯葉が写真をばら撒いたと思うのか、と問い詰めてくる。

「ゆいぴは昔から自信がない」「故に」「言葉足らずなんだよ」「常に」「ゆいぴには悪いけど」「あまり真に受けない方がいいよ」「こういう時の」「ゆいぴの言葉を」

 申し出てくれた彼らの協力を得ながら職員室から鍵を盗み、歴史資料室を訪れる冬雪。カメラを置いていた机の周辺には何もなく成果は得られない。状況の写真を撮ろうと携帯を取り出すと、バッテリーが著しく減っていることに気がついた。

 文化祭が近づいてくる。


◇5章(25,000程度)

 唯葉は自分の部屋に引きこもっていた。事件以降学校には行けなくなってしまったし、ブロックした冬雪以外に友達もいないからたった一人塞ぎ込んでいる。そんな彼女に、片吾兄妹が動画を送ってくる。冬雪からのメッセージだ。

「文化祭、ちょっと見るだけでもいいから来てくれたら嬉しい。みんなで……佐鳥さんががんばった縁日! 俺は佐鳥さんのこと、信じてるから」

 その言葉を受け、唯葉は一人、彼との日々を思い出す。ずっと自分のことが気持ち悪くて仕方なかった。それを認めて、許して、付き合ってくれた冬雪。彼が好きだ。彼に害をなすような存在になりたくないのに、自分のエゴを止められない。片吾兄妹にメッセージを送る。「真白くんが絶対、教室にいない時間帯はありますか」と。

 場面変わって、文化祭当日。唯葉が来る可能性を信じてずっと教室にいる冬雪だが、華恋が出場するバレー部の試合時間が近づき席を立ち体育館へ向かう。

 冬雪は観客席で開戦を待ちながらも、教室のライブ配信に釘付けになっている。やがて、画面に一人の少女が映り込む。企画の一環である仮面で顔はわからないが、冬雪があげたネックレスをつけていた。急いで立ち上がり、教室に向かおうとする冬雪。体育館を出て廊下に走り出すと、追ってきた華恋に引き止められる。

「冬雪、試合始まっちゃうよ。観ないの? 冬雪が楽しみにしてるって言ったからあたし、冬雪の手伝いも我慢して部活頑張ったんだよ」

 そう問い詰める彼女の声は徐々に不安定になっていき、呼びに来たチームメイトも怒鳴りつけ追い返す。

「もしかして、佐鳥さん? あんな女のところ、行って何を言うの? 何しに行くの?」

 普段の明るい彼女からは考えられない豹変ぶりに怯みながらも、冬雪はなおも教室に向かおうとする。それでも食い下がる華恋に、冬雪は厳しく告げた。

「お前だろ。写真ばら撒いたの」

 華恋は幼い頃、高身長を男子にからかわれた時、冬雪に助けられてからずっと冬雪のことが好きだった。勉強やスポーツやおしゃれを頑張り、女子の頂点・クイーンビーになった。今まで冬雪は決して誰のものにもならなかったから彼にとっての一番は常に華恋だったのに、唯葉が現れそのポジションを取って代わられてしまった。焦った華恋は唯葉を排除するために、冬雪を監視しスマホに勝手にストーカーアプリを入れて、画面をミラーリングし写真をぶっこ抜き、クラスメイトに送りつけたのだ。もう誤魔化せないと見ると開き直る華恋。

「意味わかんない。なんであの女なの? あの女のゴミみたいな性癖に冬雪はいやいや付き合ってたんでしょ? 違う?」

 彼女の言葉で、今まで直視してこなかった己の欲望、唯葉の存在がどれだけ自分にとって助けになっていたか気がついた冬雪は、「ごめん、華恋。俺には佐鳥さんが必要なんだ」と彼女の手を振り払う。相変わらず突然現れた片吾兄妹から盗み慣れた歴史資料室の鍵を受け取り、教室に駆ける冬雪。

 残された華恋は泣きながら自傷に走ろうとする。片吾兄妹に止められ、「あんたたちに何がわかるのよ!」と泣き叫ぶような華恋。揺一が叱咤する。

「10年来片思い失恋概念の辛さはよくわかる! かく言う俺も同じだ!」

「だからって、あんたたちには関係ないでしょ!」

「関係ある」

 華恋を強く否定するのは一乃。

「いちの、弥美川さんのこと好きだから」

『ワガママでキツめの人に惚れ込んでめちゃくちゃに振り回されたい』願望を持つ一乃は、先程の冬雪とのやり取りで華恋に一目惚れしてしまったらしい。「き、気持ち悪い!」とドン引きする華恋にあくまで強気の一乃は彼女をバレーのコートに戻らせようと煽り続ける。「あんたなんかに言われなくても!」と立ち上がり体育館に戻る華恋と追いかける一乃。取り残された揺一は二人を見送ることしかできなかった。

 一方、冬雪は教室にたどり着くも、唯葉の姿はどこにも見当たらない。冬雪は周囲のクラスメイトがざわつくのも気にせずに、ライブ配信カメラに向かって語り始める。流出した写真はいじめの現場ではないという事実。そして、「俺はマゾです。佐鳥さんにはそれに付き合ってもらって、あんなことを、お願いしていました……」という嘘で、聴衆の興味の矛先を自分に向ける。最後に配信を見ているだろう唯葉に、「待ってるから」とメッセージを残して教室を去る冬雪。騒々しい注目を浴びながらも廊下を堂々と進んでいく。向かうのは歴史資料室。中で、後夜祭の始まろうとする校庭を眺めながら唯葉を待っていると、花火の準備が始まる頃に唯葉がやって来る。

「なんであんなこと言ったの。わたしを、かばうため……?」と泣きそうな彼女に、冬雪は告げる。

「俺ずっと、佐鳥さんにお礼が言えてなかった。役割のなかった俺を見つけてくれてありがとう。俺に役割をくれてありがとう。『俺』を必要としてくれて、嬉しかった」「俺、佐鳥さんのプレイが好きだ。佐鳥さんにいじめられるのが好きだ。……佐鳥さんが必要だ」「もしもそれで、君が救われるなら……俺の、俺だけの……女王様に、なってください……!」

 花火が上がる。唯葉は驚き、涙の浮かんだ目を細めて、小さな声で「……勿論」と答える。

 手を取り合って後夜祭を見下ろす二人。

「佐鳥さん」

「ん?」

「これからも、俺を支配してください」

「うん! ……ずっと、ずっと」


◇エピローグ(8,000程度)

 翌日文化祭片付けの日。冬雪に対するクラスメイトの態度は案じていたほど変わらないが、軽いノリで性癖を揶揄われてしまう。それを庇ってくれるのは華恋。「べ、別に冬雪の性癖認めたわけじゃないから! 勘違いしないでよね!」と冬雪のゴミ捨てを手伝ってくれる。その道中で、別所で作業していた唯葉とはち合わせる。憎々しげながらも謝罪する華恋。そこに突然湧いて出て、彼女を慰める一乃。隣で揺一は置いてきぼりにされている。そんな皆の姿を見て、なんだかんだ楽しい日常をこれからも送るのだろうと予感する冬雪であった。

 ところ変わって、市内のアダルトグッズ店。一人の爽やかな美男がボールギャグを購入し退店していく。男は「この街に降り立つのも久しぶりだ……娘はどうしてるかな」と独り言ち、高校がある方向へ歩いていくのであった。

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