第11話「ストーリー中盤を超えた者」
シャリーン
「うおひょおおおおいいいいいいいい!?!?」
私の快感パラメータが突如振り切れます。このマスターはもう少し課金に躊躇しないのでしょうか?
ようやくストーリーも後半に入ってきた頃、課金者と非課金者を区別するように強力なファンタズマを敵に出し始めました。ガチャを引いてそのステージ特攻のキャラを入手しないと相当のプレイヤースキルを要求される実装がなされました。
これによって新しい敵に勝てないユーザーはデイリークエストとウィークリークエストをこなして石を貯めてガチャを回す羽目になったようですね。まあ私のマスターの『よんぴん』様はガチャをたっぷり回してくださるので順調に進んでいっているわけですが……
シャキーン!!!!!
おっと、重課金者の特権である聞き飽きたであろうSSR確定の演出が出ました。
「だいじょうぶ? 君は私が守るから安心してね!」
お姉さん系キャラですね。よんぴん様は何の感慨も無くキャラ紹介をタップしてスキップしてしまいます。もったいないとは思うのですが、重課金をしているとSSRが出てくることくらい、水道から水が出るごとき当たり前のことなのでしょう。お金というのはこの世界において世界を救う鍵となっているのです。ゲーム内の世界では貨幣はファンタズマの侵攻によって紙くず同然になっている設定のはずなのですがね……
シャリーン
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
課金されると気分が上がりますねえ! 人間様と違って快感に耐性がつくことが無いので私はAIとして幸せな生活を送ることが出来そうです。ましてやこの運営によるふるい落としにも耐えてアクティブユーザーとして残ってくれた方です、私の将来は明るいと言えますね。
ちなみに課金ガチャを回す金額の半分をコンティニューに充てていればこの章も余裕でクリア出来ています。本当に人間というのは不合理な行動を取るものなのですね。
シャキーン!!!!!
おっと、そんなことを考えていたらまたもSSR演出です。
「ハロー! 元気でやってる? 私の助けが必要かな?」
この人類の黄昏時にやたら明るい声で現れたのは、まだ取得していない新キャラでした。いるんですよねえ……こういうラッキーな引きをピンポイントで出来る人って。他の課金者担当になった私にもガチャの具合を聞いてみたいものです。まあこの小さなサンドボックスが私の世界の全てなわけではありますが……
私はよんぴん様が欲しいキャラだったのかどうか不安になります。いえ、この人は欲しいキャラが出るまでガチャを回す人なので問題無いわけですが……
『元気出しなさいよ』
『私が居ないとダメなんだから』
キャラがボイスを流しています。ホーム画面でタッチすればおしゃべりするのですが、マスターはポンポンとキャラをタップしています。どうやら気に入ったようですね。少し残念ですがマスターは幸せになったんだからこれでいいのでしょう。
シャリーン
「ふぇ!?!?」
私に届く快楽データはプロセスを動かし心地よい感覚を伝えてくれます。迷うことなくマスターはガチャ画面に移動しました。そして石を使ってガチャを回します。
「新しい仲間が来ました!」
私はいつものメッセージを流して演出を待ちます。
シャキーン!!!!!
おっとSSR演出ですか、課金者を優遇している疑惑が出ちゃいますよ? いうてP2Wが標準のこの界隈で課金した人を優遇するのは当然なのですが……
『お助けは要りますかー? 頼りになる先生ですよー』
おっと、先生キャラでした。未所持キャラですね、私は『凄い人です!』と決まり通りの文句を言ってガチャを終えました。十連で引けるようなキャラじゃないはずなのですが……そこは豪運のなせる技なのでしょう。決して特別テーブルが用意されているわけではない……はずです。
こうしてよんぴん様は貴重なお金をガチャに注ぎ込みました。私はなんとなくですが、煩わしい年齢による課金制限がある理由の片鱗を知ったのでした。
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