第12話

 ハッチの外に梯子を降ろす。金属の足が大地に突き刺さると、軽い砂ぼこりが舞った。

 そして、階段を一歩一歩下りていく。

 

「用意はいいか?」

「大丈夫」

「よし、せーの」

 白いブーツが赤い地面にどっしりと食い込んだ。

 足を上げると、靴底の形がくっきりと刻まれた。


 人類初の地球外惑星への足あとが、ふたつ。


 国旗を広げ、二人は一緒に棒を握ると力を振り絞り、火星の大地に思い切り突き刺した。

 地平線から昇る太陽の光が、旗に記された日の丸を照らして光彩を放つ幻影を映し出す。


「……ありがとう」

 宇宙船に残った私は一人呟くと、体から赤い翼の鳥が一羽、飛び去っていく幻想を抱いた。


 人類の真の歴史はここから始まる。

 もはや神を必要とはしない、

 さえぎるものは何もない。

 無限に広がる宇宙はあなた達のものだ。

 永遠に栄えよ、子供達。

 まだ見ぬ未知みちに足あとを残すために。



 ひのとり・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひのとり NEURAL OVERLAP @NEURAL_OVERLAP

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ