12月6日 火の国の火酒
そろそろ夕食の時間ですが、まだ飲めます? いける?
力強く頷いてくださったところ申し訳ないですが、ダメそうな顔をしているのでもう少し後にしましょうか。ドワーフ達に囲まれていると忘れがちですが、人間ってね、酒を飲み過ぎたら死ぬんです。
酔い覚ましのついでです。一日食べ歩きして酒もつまみも色々と味見したところで、そろそろお土産用にひと瓶買っておきましょう。
火の国ウルは世界一の鍛冶屋の街ですが、それと同時に世界一酒の美味い土地でもあります。有名なのは
といっても私、お酒はよくわからないんですよね。というかね、この街の酒場で蒸留酒を頼んでも、チェイサー出してくれないじゃないですか。そんなの恐ろしくて飲めません。なのでとりあえず……そこでニコニコしている店主に尋ねてみましょう。この金色のやつ、何ですか?
「まずは一杯飲んでみろ。酒なんてな、それが全てよ」
あ、だめだこりゃ。蒸留酒をジョッキで出されました。水割りじゃありません、原液です。
……というわけで、未成年の皆さんとあまりお酒に強くない方がこの街に滞在する時は、自前の水を持ち込むか、酒はきっぱり断ってメニューにないフルーツジュースを作ってもらうようにしてください。アルコールアレルギーの方は食材を買って野営ご飯にしましょう。たぶん酒場に入るだけで危険です。焚き火で炙るだけで美味い上質な肉、たくさん売ってますから。
けれどお酒の味がわかる大人の方にとっては、ここは天国みたいに楽しいところです。香り豊かで上質な舌触りの蒸留酒、金色に光るシュワシュワの穀物酒、とろりと甘苦い果実酒、何でもあります。そのどれにも、人間の醸造するものとは一線を画する何かがあるのです。鍛冶屋の魔法鍛錬と同じ、妖精の魔法がかかっているのかもしれません。
しかも例によって経営は雑なので、大瓶を買っても格安。ただ、ガラス瓶の見かけだけはあまり期待しない方がいいでしょう。口の部分の密閉性だけはしっかりしていますが、そこ以外にこだわりは全くないので、すごく歪んだ失敗作みたいな瓶が平然と並んでいます。ドワーフは基本、鍛治仕事と美味い酒以外に興味がないのです。
……そろそろどれを買うか決めました? あ、寝てる。
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