エシェンの土産物カタログ(アドベントカレンダー2022)
綿野 明
11月27日 空の街の空玉
大粒のビー玉のような鮮やかな空色のガラス玉が、マクラメ風の白い飾り紐で吊り下げられているオーナメントです。中空ではありませんが、見かけは漁業用のガラスの浮きにも少し似ています。窓辺に飾るとキラキラ光り、光にかざして覗き込めば嵐の日でも青い空の色を堪能できて、しかもなかなか安価! だいたいランチ一食分くらいの値段で購入できます。
空の街、という場所をご存知でしょうか? 地底洞窟国家ヴェルトルートの唯一の国境、つまり地上に繋がる大穴の真下にある街です。世界一の大きさを誇る魔法陣「大天文陣」のおかげで洞窟内のどこでも空を見ることはできますが、この国で「本物の」を見ることができるのはここだけ。故に本当はイエルという名前ですが、みな空の街と呼んでいます。やはり本物の空は光の強さも青空の鮮やかさも段違いで、その空模様を余すことなく楽しむため、街の建物は全て真っ白です。白い街のそこここでたなびく青い旗、眩しい光に湿度の低い爽やかな風。そして唯一の国境だけに精鋭が集められた最強の騎士団。どちらかというと空を見慣れた地上の民よりは、国内の観光客に人気の場所です。
そんな街で一番人気の土産物が「空玉」。空の色をスポイトで採って閉じ込めたような鮮やかな発色は、この街のガラス職人だけが知る秘伝の技で作られています。屋台なり土産物屋なり飲食店の片隅なり、入れる店ならほとんどどこにでも置いていますので、店を探す必要はありません。が、こだわりたい方はぜひ街を探索して、お気に入りの店を探してみてください。一番人気は夏の青空色ですが、朝焼け色も夕焼け色も夜空色もあります。職人によって感性も得意とする色味も違いますから、同じ曇り空色でも灰色と青の配合比率は千差万別。手作業で作られるガラス玉表面の表情も色々。傷ひとつないツルツルの球体のもの、少しうるうると揺れがあるもの、豪快で傷が多いが味のあるもの、大きく歪ませて水中から見上げた空のような光の揺れを作り出すもの……じっくり選び始めたらキリがありません。
はじめにオーナメントと言いましたが、より正確に言うと「空玉」はガラス玉部分のことだけを指します。お土産にするならベルトに下げたり窓辺に吊るしたりできるオーナメント型がオススメですが、玉だけがコロンと宝石箱に収められたものや、小粒の玉をペンダントやイヤリングなどに加工したものも良いかもしれません。ある程度の大きさがある方が色味が美しいと、拳大の大玉を首から下げる猛者もちらほら見受けられます。首が強い方はお試しあれ!
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