2022/12/22 『ユグドラサス』

「え、『ユグドラサス』を遊ぶんですか?」


 ボドゲ会の帰り道、カドさんがぎょっとした顔で俺を見下ろした。

 俺はそれに頷いてみせる。


「そう。先輩がメンバー集めてて。カドさん、良かったらどうです? プレイ時間読めないんで、無理にとは言わないですけど」


 そういえば、ボドゲ会で出会う人はほとんどが年上だったから、ボドゲ会ではずっと敬語だった。そのままなんとなく、カドさん相手にも敬語で話していた。

 相手が誰かによって態度を変えるのが面倒だったから、程度の理由だけど。それでも今となっては、敬語をやめるのも不自然だろうと思っている。それにもう、これで慣れてしまったし。

 俺の提案に、カドさんはスマホを取り出して操作を始める。予定を確認しているらしい。


「興味はあるし、遊びたいんですけど……返事待ってもらって良いですか?」


 カドさんが慎重な返事をするのも無理はない。

 この『ユグドラサス』というボドゲは発表時に「プレイ時間が一日」という点で話題になった超重量級プレイ時間が非常に長いボドゲだ。ちなみに箱もやたらデカい。

 先輩もいつ遊ぶかと悩んでいたらしい。


「返事は週末までで良いですよ。あ、高校生なんだし、親に怒られるようなことはしないでくださいね。誘っておいて俺が言うなって話だけど」

「いえ。誘ってもらえて嬉しいです。遊んでみたいとは思っていたんですよ、『ユグドラサス』。なんとか参加したいです。夏休み中ならなんとかなると思うし」


 そう言って、カドさんは笑った。あの超重量級ボドゲを遊ぶのが、本気で楽しみらしい。

 人のことは言えないけど、カドさんは相当なボドゲ好きだ。しかも、雑食の。軽量級から重量級まで、大喜利系からストラテジーまで、貪欲に遊びたがるし、実際に楽しそうに遊ぶ。

 俺もどちらかと言えば雑食で割となんでも遊ぶ方だから、カドさんの傾向を好ましく思っていた。

 それに、こういうときに声をかけやすい。誘って一緒に遊ぶなら、やっぱり楽しそうにしてくれる方が気分が良い。


「なんかすごいダイスタワーがあるんですよね」

「ああ、ダイスタワーの組み立てだけはやったって言ってましたよ。箱が大きい理由の何割かは、あのダイスタワーのせいだって」

「それも見るの楽しみです。場所をとるとしても、ダイスタワーってやっぱりテンション上がりますよね」

「まあ、そういうのはありますね。内容物コンポーネント良いと、やっぱりプレイ中楽しいですから」


 そこから、今度は『ウィングスパン』のダイスタワーも良かっただとか、『エバーデール』のツリーも良かっただとか、『ツォルキン』の歯車が好きだとか、コンポーネントの話で盛り上がる。

 カドさんとは気楽に、楽しく、こうやって会話できる。

 多少の年の差はあるし、あと妹が関わってくると面倒くさい部分もあるけど、それでも俺がカドさんを好ましく思っているのも事実だ。

 もしかしたら、友人、と言っても良い関係なのかもしれない。

 まあ、カドさんがどう思っているかはわからないけれど。




『ユグドラサス』


・プレイ人数: 2〜4人

・参考年齢: 12歳以上

・プレイ時間: 1日(慣れたら人数×60分~)


 『ユグドラサス』は一般販売は2021年9月でしたが、クラウドファンディングの返礼の配送は7月でした。兄さんの先輩は、クラファン組です。なので夏休み中に遊ぶことになりました。




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