闘魚(ベタ)

霧這

ある1匹の魚の証言

“埋められた弱虫がやがて餌になる”

アノ子が原因で自分は悪くないと何度も何度も餌を与えてる。

「顔がアタシよりマシなのにアタシと違って何も出来ないから」

「何でも出来るアタシに振り向かないから」

「だから寒い廊下に立たせました」が動機なんて自分でも歯止めが効かず、あとをつけた何とは言わないけど。

見せ物にしたかった。させてやりたかった。

でも“麗しい”アノ子は飼い主に看病されて別の水槽で元気に過ごしてる。

群れを作って1番大きくなったアタシは大好きな飼い主が売った。

一緒になった雄魚おすうおを殺したら、新しい飼い主が鬼の形相ぎょうそうで川に捨てた。

自由になると喜んだ。実際、自由だった。

冬は寒いが、暖かくなれば平気で不味いが浮いてる魚を食べれたし、生きてる弱い奴等も食えた。出会った雄魚も胃の中。

山が地鳴りを上げて近づいてきた。

土砂に埋もれた弱虫はアタシだったのか!

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闘魚(ベタ) 霧這 @Sachi8hyA9sya7

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