第2話 めんどくさいから特に何もしなかった……
いやまあ、アレだよね。
放って置いたらなんか嫌な事が起こるのかもしれないけれども、俺に一体どんな対処方法があると言うのか。
俺は前にも言ったが、しがない三流大学の工学部に通う二回生だぜ?
医学部でもなければ、心療内科なんて物を齧った事など欠片も無い。
そんな俺が見る夢の内容に対して、どうこう出来る訳など無いのは分かり切った事だろう? 俺みたいな馬鹿でも分かる事だ。
まあ、そんな訳で俺は特に何もせず、いや出来ずにその時を迎えたんだ。
前回夢を見た段階では、起点は矢が飛んでくる数時間前だった事から次に見るとしたらその直前か、事後になると思っていた。
そして俺の予想は当たっていたみたいで、夢を見ていると気が付いた時には既に事は終わっていた様だ。
即ち、只今絶賛矢が胸に刺さっていると言う状況な訳で、俺は死ぬ寸前であった。
痛いっ! 死ぬほど痛いっ!
侮っていた! 矢が刺さるっていう事の本当の意味を!
あっ?! ゴポッ! ゴフッ!
肺に血が溢れてきた! ゴフュー、ゴフッ!
息をするのが辛い! いや、呼吸が出来なくなってきた!
不味い! 本当に死にそうだっ! いや! 確実に死ぬっ!
ゲハッ! バシャーッ!
俺は血反吐を吐きながら猛烈に後悔していた。
死ぬかもしれない事態を安易に放置してきた事を。
だが、それは当たり前に後の祭りと呼ばれる状態で、も
う俺にはどうする事も出来そうにない。
ああ、俺は死ぬのかと胸の激痛と息苦しさの中で諦観していた。
ああ、もっと生きていたかったなぁ。
あの子にも告白して置けば良かったなぁ。
そうしたら色んな良い事があったかもしれないのになぁ。
そんなくだらない後悔の思いを感じながら俺の意識は薄れていった。
俺は死んだ。
くだらないいざこざの末に起こった、武力衝突の中での出来事だった。
その戦いの中で死んだのは俺だけだったみたいだ。
くだらない。俺の人生とは一体何だったのだろうか。
意味もなく生まれ、何も成さずに死んでしまった俺。
出来うるならば、次に生まれる事が出来たなら、今度はもう少し意味のある生を全うしたいなぁ。
と、思った瞬間に目が覚めた。
目が覚めた時、俺は泣いていた。
いや、涙を流していた。
それも滂沱と言っても良い位の量だった。
目覚めた瞬間には胸に溢れた感情の荒波に翻弄されかけたが、その波は急速に落ち着いて後には無力感しか残らなかった。
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