馬鹿な王子は運頼み



 アイーシャがいなくなり、国の崩壊が現れ始めた頃、クロードは国中に密かにアイーシャを拘束、もしくは行き先を発見しろという命令を下していた。そして、3日目の早朝に、東門から報告が上がった。


 “アイーシャが使った痕跡があった”と。


 クロードは愛しの婚約者ライミーを王城に呼び寄せ、報告に来た門番と話をした。ぱっとしない顔の不細工な男だ。クロードは見た目の良くない平民と長く一緒にいたくないという気持ちと、早くアイーシャを連れ戻して忙しすぎる公務(何もしていない)から解放されるために、要所だけを聞くことにした。


「して、東門を使った後、あいつはどこに行ったんだ?」

「………すみません。分かりません。ですが、東門を出た後、東に向かってそのまま馬車を走らせたのを目撃した者がいます。証言者として連れてきても構いません」

「いや、必要ない。東………、東だな?」

「はい。」

「もういい、下がれ」


 クロードはいそいそと世界地図を取り出し、じぃーっとごちゃごちゃした世界地図を見つめた。そもそも彼は、王太子でありながら、周辺諸国の世界地図すら頭に入れていなかったのだ。


「東となると、フェリーン王国と、ふりゅー、たん?王国だったか?」


 外国語と混合の地図を見ながら、クロードは必死になって国名を読んだ。周辺諸国を覚えていない彼は、当然ながら外国語の授業も真面目に受けていない。


「えぇ、そうね。東にあるのは近い方から、フェリーン王国、フリュータン王国、そしてクルーエン帝国だったはずよ。あぁ、あと、………記憶違いじゃなかったら、ーーそう、記憶違いじゃなかったら、アイーシャ無能の母親の実家はフェリーン王国だったはずよ」

「へぇー、じゃあ、フェリーン王国に行こう」


 こうして、ライミーの1声で、クロードとライミーは運頼みもいいところの『アイーシャお迎え作戦』に出ることになったのであった。

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