第42話
「あんた達よ!!魔法が使えない?そんなのが上に立つなんて信じられない!!」
アイーシャの怒りに気がつかないライミーは、なおも叫んだ。
「へぇー、私たちが無能とはよくも言ってくれたね?そっちの国では神様かなんかに見放されたみたいに、災害が立て続けに起こっているそうじゃないか」
「っ、」
「我が国は君たちの言う神様に1度も見放されたことがない。何故なら、その君たちの言う神様と契約ができるからだ」
「!?」
クロードとライミーに怒り心頭なのはアイーシャだけではなかった。サイラスも同じ気持ちだ。
「アイーシャはその君たちの言う神様の愛し子だよ。愛し子が不当な扱いを受けていたことにひどく憤っているんだ。もう彼らは君たちに顔を向けることはない。今も君たちを殺そうと刃を向けたいのを、アイーシャに言われて必死に抑えている状況なのだから」
「っ、」
クロードが青い顔で息を呑んだ。
「じゃ、じゃあ、王太子妃の席を用意する!!それで十分だろう!?だからアイーシャ!!戻ってこい!!お前の刺繍が必要なんだ!!」
「………嫌よ。死んでもごめんね」
アイーシャはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。見下されていることと、断られたことに顔を真っ赤にしたクロードは、殴り掛からんとアイーシャに向かって拳を握り込みながら走り出した。
ライミーは魔法を展開する準備をしている。
異国の貴族相手に手を上げることがどういうことか分かっていない愚かな元婚約者と従姉妹に、アイーシャは大きく溜め息を吐いた。
「愚かだな」
吐き捨てたサイラスは、向かってくるクロードをアイーシャの間に入り込んで投げ飛ばした。
「エステル、守り切れる?」
アイーシャは微笑みを浮かべたまま問いかけた。
「《誰に聞いているの?わたしは光の精霊王よ》」
「《僕も手伝ってえぇかな?》」
サイラスの精霊、サンもご機嫌にやってきた。
「えぇ、頼んだわ。ライミーからの魔法を防いで」
アイーシャが言った次の瞬間、彼女十八番の炎の槍が飛んできた。そして、光の盾によって一瞬で消え失せた。
「なっ!?」
「だから言っただろう?アイーシャは愛し子だって」
「うぅー、」
呻き声を上げて床に転がっているクロードと、床にへたり込んだライミーは絶望に染まった顔を助けを求めるようにアイーシャに向けた。
「それに、アイーシャは私の婚約者だから、どこにも出さないよ」
「「!!」」
サイラスの言葉に、2人は目を見開いて固まった。アイーシャはそんな2人に向けて笑みを深めたあと、鼻で笑ってから口を開いた。
「えぇ、そうよ。わたしはこの国の王太子の婚約者よ。だから、あなた達の行動にはディアン王国にそれ相応の対価を払ってもらうわよ?」
「「ひぃっ!!」」
アイーシャは決めたのだ。絶対に彼らと、彼らの住む国を許さないと。そして、心をポッキリ折るように本気で完膚なきまでに叩き潰してやると、そう決めたのだ。
だから、彼女には一切の躊躇いも足踏みも存在しない。心を鬼にして自分のことを陥れ、馬鹿にした人間に復讐をするのだ。何がなんでも代償を払わせるのだ。
「楽しみね」
アイーシャは口の端を小さく上げて首をちょこんと傾げた。
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