第29話

▫︎◇▫︎


 アイーシャを追い出した3日後、豪華絢爛な馬車を用意させたクロードとライミーはやっとのことで掴んだアイーシャの居場所へと馬車を出発した。


「あの子をさっさと連れ戻さないといけないわね」

「そうだな。この馬鹿げた災害が全部アイツのせいだとしても、連れ戻さなければ、いずれ国が崩壊する。報告によれば、災害は日に日に悪化しているようだしな」

「そうね。アイツのインチキをさっさと暴いてやりましょう!!」


 災害で民が苦しんでいる中、王族の乗った豪華絢爛な馬車が平民街を走った。すると、馬車は平民達による多大な攻撃を受けることになった。魔法で作りだされた石や岩、炎は平民達の怒りの象徴のようでもあった。


「王太子殿下、いかがなさいますか?」

「ふっ、ーーー蹴散らせ」


 クロードは愉悦に満ちた表情で下卑た笑みを浮かべた御者に命じた。馬車やその周辺はクロードの結界魔法により、攻撃を受けたとしても全て無効化されている。平民達の必死の攻撃など全てが無駄な行いなのだ。


「うわああああぁぁぁぁぁ!!」

「ぐはっ!!」

「きゃー!!」


 御者が魔法を使用した次の瞬間、平民達の間から悲痛な悲鳴がいくつも上がった。痛みを伴い呻く者や、家族が怪我を負い慌てふためく者、平民相手になんの容赦もなく魔法を放ったことへの罵詈雑言。まさに数日前元王太子の婚約者であったアイーシャの私物や作品を燃やした際の声とは反対であった。そんなまさにカオスと言っても過言ではない光景を前に、現王太子の婚約者たるライミーは楽しげな微笑みを浮かべた。


「うふふ、私達に逆らうからこうなるのよ。皆殺しにしないだけ感謝してもらわなくちゃ」


 平民達はやっと自分達のが誰であったのかを知ることができたが、もう既に時は遅かった。

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