第21話
「じゃあ、アイーシャちゃんは私とお義母様と一緒にお買い物に行きましょう!!」
「はい」
寝ぼけがだいぶ抜けたアイーシャは微笑んで答えた。
「途中でお手紙を出したいのだけれど、構わないかしら?」
「えぇ!誰に出すの?」
「わたしがここに来る手筈を整えてくれた人に」
アイーシャの返答に、シャロンはポンと手を打った。
「カリーナ夫人!!」
「はい。叔母さま、彼女のことがお気に召したの?」
「えぇ、だって彼女、私ととっても趣味が合いそうなんだもの!!」
アイーシャはカリーナのことを思い出してふむふむと頷いた。確かにシャロンとカリーナはとても気が合うだろう。だが、アレは絶対に混ぜるな危険だ。絶対に混ぜてはいけない。混ぜたら身に危険が及ぶとアイーシャの本能は警鐘を鳴らしていた。
「まぁ、そんなお話は後でいいでしょうから、ひとまず買い物にいきましょう」
待てなくなったのか、エカテリーナが声をかけた。元王女というのを納得させるような透き通った従いたくなる声音に、アイーシャは背筋を伸ばした。
「アイーシャちゃんはしっかりと教育を受けていたようですわね。文句の言いようがありませんわ」
「ありがとう存じます」
美しく背筋を伸ばしたまま頭を下げたアイーシャに、エカテリーナは満足そうに頷いた。孫の出来の良さを感心するエカテリーナは、どちらかというと祖母というよりも教師のように見えた。
「敬語については使わなくてもいいですわ。わたくしは敬語の方が話しやすいので敬語にさせていただきますが」
「分かっているわ、お婆さま」
にこやかに話す2人に、シャロンは肩をすくめた。
「シャロンもちょっとはアイーシャちゃんを見習ったらどうかしら?」
「お断りするわ。私、社交界の時以外にちゃんとする気がないの」
「はぁー」
シャロンの悪びれない言葉に、エカテリーナは大きく溜め息をついた。家でのシャロンは無邪気で明るく愛らしいレディーだが、社交界では高嶺の花、女王なのだ。
「参りましょう、お婆さま、叔母さま」
「そうですわね」
「レッツゴー!!」
言い合いに発展しそうな空気を感じ取ったアイーシャは、出発をすることで忘れてもらおうと買い物に行くための馬車にさっさと乗り込むことにした。馬車は流石は公爵家の物と言わざるを得ないくらいに乗り心地がとても良かった。アイーシャはガタゴトと揺れるゆりかごのような馬車のせいもあり、見事に眠ってしまった。
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