第9話

「エステル」

「《は~い!わたしが光の精霊女王のエステルだよ~!!》」


 黄金色の輝きを放つ星という意味の名を持つエステルが、ぴょんと飛び上がってアイーシャの頭の上に乗った。


「ユエ」

「《僕は闇の精霊王で~、ユエだよ~》」


 黒の輝きを放つ精霊、ユエという月を意味する名を持つユエはふんわりと飛び上がり、アイーシャの頬に擦り寄ったあと、エステルと一緒にアイーシャの頭の上に乗った。


「フー」

「《はい!はーい!!炎の上位精霊のフーだよ~!!》」


 元気よくアイーシャの手から飛び上がった赤い輝きを放つ精霊の炎という意味の名を持つフーは、上手に宙返りをして見せた。


「エアデ」

「《は~い!私が土の上位精霊、エアデよ!!》」


 オレンジの輝きを放つ精霊、土という意味を持つ名を持つエアデはアイーシャの手の上で手を上げた。


「アクア」

「《はい!はーい!!水の上位精霊のアクアだよ~!!》」


 水色の輝きを放つ精霊の水を意味する名を持つアクアはぴょんと飛び上がり、フーに後ろから抱きついた。


「ヴィント」

「《風の上位精霊のヴィントだよ~。よろしくね~!》」


 緑の輝きを放つ精霊、風を意味する名を持つヴィントはちょこんとアイーシャの手の上で立ち上がって首を傾げた。


「これはこれはご丁寧にありがとうございます。アイーシャの叔父に当たります、ユージオと申します」


 ユージオは立ち上がって礼をし、敬意を払うように深々と頭を下げた。


「《ユージオはいい人ー!!》」

「《アイーシャ、この人だいじょーぶ!!》」


 フーとアクアはユージオの周りを飛びまわって言った。


「《悪い気は纏っていないわ》」

「《うんうん、ここにいる人たちはみんないい人たちだね。ディアン王国とは大違いだ》」


 エステルの偉そうな言葉に、ユエは冷静に頷いた。


「《えーっと、シャロンだったかしら?アイーシャはお洋服に無頓着だから、あなたがこの子を着飾ってやってちょうだい!!》」

「えぇ!お任せください!!アイーシャちゃんみたいな可愛い子を着飾れるなんて最高だわ!!」


 エアデは悪戯っ子の表情でシャロンに言った。

 アイーシャはそんな2人を引き攣った笑みで見つめていた。アイーシャは着飾ることがあまり得意ではないのだ。


「《ラインハルトとエカテリーナ、ユアンとショーンもアイーシャのことをお願いするね》」


 ヴィントは穏やかに微笑んで言った。風のようにふわふわしているのにも関わらず、威厳のある不思議な子だ。


「任せい」

「えぇ、」

「あぁ!!」

「はい」


 口々に返事をしたのに満足をしたのか、ヴィントはふんわりと微笑んだ。


「アイーシャちゃんは精霊使いとしての才能が高いのですね」

「そうなのですか?」


 アイーシャはエカテリーナの言葉に、こてんと首を傾げた。アイーシャにとってこの子達精霊達が自分の側にいるのは当たり前のことだった。特にエステルとユエは物心つく頃から側にいることもあって、アイーシャがよく頼る対象となっている。


「…………皆さまの精霊はどのような感じなのですか?」

「わしは水の中位精霊のウォーティーだけだ」


 男の子の容姿をした水色の精霊がラインハルトの肩の上で美しく礼をした。


「《ウォーティーと申します。アイーシャさま、以後お見知り置きを》」


 礼儀正しく愛らしい精霊に、アイーシャは花が綻ぶように微笑んだ。


「わたくしは炎の中位精霊のブレイズと風の低位精霊のウィンディーですわ」

「《ブレイズだよ》」


 赤い輝きを持つ男の子の精霊は首を傾げながら、エカテリーナの後ろからひょっこりと顔を出した。


「《ウィンディーです》」


 エカテリーナの白い髪の毛の中から周りを窺いながら名乗った緑色の女の子の精霊はおどおどしていた。


「私は契約は結んでいませんが、この子がいつも側にいます」

「《ユージオは契約は結びたくないっていうから私はずっと名無し。一応上位精霊よ》」


 水色の輝きを放つ女の子の精霊は、ぷくぅーっと頬を膨らませた。


「私の精霊は土の上位精霊のランドと、光の低位精霊のライトよ」

「《ランドだよ?》」

「《ライトです》」


 双子のような男の子の精霊達は、オレンジと黄金色の輝きを放っていた。


「俺の精霊は、闇の上位精霊でダークだ!!」

「《ダークだ!!よろしくな!!》」

「僕の精霊は炎の上位精霊のファイヤーと土の上位精霊アースだよ」

「《ファイヤーだよ》」

「《アースだよ》」


 黒い男の子精霊のダークと赤い男の子精霊ファイヤー、オレンジ色の女の子の精霊アースが一斉にぺこりと頭を下げた。


「アイーシャよ。みんなよろしくね」


 アイーシャが微笑むと、精霊達は一様に輝きを強めた。誰の契約精霊でもない精霊の力もその一瞬だけぶわんと強まった。


「………アイーシャは真の精霊の愛し子かもしれんな」


 ラインハルトの呟きは、精霊と幸せそうに戯れているアイーシャに届くことはなかった。

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