第7話
「さぁ、こんなところで話すのもなんだし、中に入りましょう!アイーシャちゃんも疲れているでしょう?」
シャロンがアイーシャから離れた後、パチンと手を合わせながら言った。
銀色の髪が太陽に反射してとても綺麗だった。
「お気遣いいただきありがとう存じます、シャロンさま」
「叔母さまと呼んでちょうだい!!言ったでしょう?可愛い姪っ子と一緒に過ごせて嬉しいって!!今度一緒にお買い物に行きましょう!!」
「はい!!」
アイーシャは叔父や叔母というのは、アイーシャを追い出してキャンベル家を乗っ取った恐ろしいライミーの両親を思い描いていたが、ユージオやシャロンと触れることでそうではない人もいるのかもしれないと思うことができた。
「ベラ、アイーシャちゃんのお荷物を持ってあげてちょうだい」
「承知いたしました。奥様」
ベラと呼ばれた女性は赤毛の混じった茶髪をキッチリ縛り上げた“できる女”という風貌の女性だった。
「じゃ、じゃあ、この旅行カバンをお願いするわ。裁縫箱は自分で持ちたいの」
「かしこまりました。お嬢様」
テキパキとしたベラの動きは、容姿に似合って本当に無駄がなかった。
「………その裁縫箱、………」
「お母さまの品物です。遺品はコレしか残っていなくて………」
エカテリーナの懐かしそうな声に、アイーシャは申し訳なさそうに答えた。
「キャンベル家についてはこちらでも調べてある。助けてやれなくてすまなかった、アイーシャ」
「いえ、ラインハルトさまの気にすることではございません。自分で自分を守りきれなかった自己責任です。もっとわたしがしっかりしていれば、ああはならなかったはずですから」
心配してもらえたことに、アイーシャの心は少しだけ報われた気がした。久々に味わったぽかぽかしてふわふわする感情に、アイーシャは困惑したが、今はとりあえず無視することにした。
「アイーシャちゃんには陽当たりがいいお部屋を用意してみたの!!お昼寝には絶好のお部屋よ!!」
「そうなのですね、わたし、お昼寝はしたことがないので憧れますわ」
「そうなのね!お昼寝はもう最っ高なのよ!!アイーシャちゃんも今度やってみたらいいわ!!」
気分を紛らわせるためか、ダイニングルームに向かう最中にシャロンはアイーシャに対して沢山話しかけてくれた。他愛もない会話は、駆け引きや蔑みの含まれる会話しかしたことのなかったアイーシャにとっては珍しく映ると同時に、とても楽しいものだった。
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