強制結婚されたけど頑張ります。~優しい旦那様も付いてきたので、強制結婚した方が良かった件~

アルガ

第1話 強制婚約

「ミーアよ。妹の身代わりとなり、グロスター家に嫁げ。いいな」


 怒気を込められた声に私は反応さえしなかった。だって返事しても「うるさい」と殴られるから。はぁ、どうしてこんな目にあってるのかしら私は。


「あら、泣きもしないなんて気持ちの悪いお姉ちゃん。こんなのがホーエン家の括りになってるなんて……先祖様も悲しんでるでしょうね」


「うっ。こんな出来損ないをお姉ちゃんって呼ぶなんて、優しくて泣きそうだわお母さん……」


「本当に優しくて良い子だエリザベス。さすが私たちの『本当の娘』だ」


 私だってアンタらの家族だって思われなくて嬉しいし! エリザベス私の妹を見るときだけ表情を変えて! ほんっと気持ち悪い!


「……というわけだ。明日出発だからさっさと準備しとけ」


 エリザベスを見ていたときと打って変わり、私を憐れむような蔑むような目で見てきた。心のなかでは反抗しているけど、虐待されまくって抵抗を示す気にはなれなかった。


 たしかに私は妹のように、ホーエン家の特徴の金髪とか高身長とか頭脳とか引き継いでない。そしてアイツら父と母と妹みたいな美貌もない! アイツらから逃げられるのは良いけど、嫁ぎ先が最悪なのも最悪!


 だって、ホーエン家とグロスター家は犬猿の仲だから。大本は同じ血筋だったんだけど、派生して出来たのはホーエン家。一応分家扱い、けれどなまじ実力も地位もあるせいで争いは絶えなし、グロスター側もうんざりしている。


 そんな中、「元は同じ一族だから仲良くして、より一層繁栄しよう」とホーエン家に通達が入ったの。仲良くするのはいいけど、条件が『ホーエン家の娘を差し出し婚約すること』だった。


 普段は物置小屋で暮らしてるせいで、薄い壁から家族会議が聞こえていたのだ。死んでしまっても良かったけど、なぜか毎回失敗するから諦めてた。幸せが来る! って思ってたけど、もっと不幸じゃん!



 バシッ。考え事をしていたせいで立ち上がるのが遅れていたらしい。さっさと姿を消せの意味で、母にビンタされた。


「っっ」


「命令されないとわからないかしら」


 仕方がないから部屋を出る。そもそも物置小屋に帰っても自分用のなんてないんだけど。


 コンコン


「お姉ちゃん。最後の別れだよ?w 顔くらい見せてよー」


 ちょうど冷え込んできた夜、妹がやってきた。男と遊んできたあと、ついでにおもちゃにしようときたんだろうな。


「ねえねえ、寂しい? でも安心してよ。あっちの家でもイジメられるに決まってるから! お姉ちゃんはー地味な顔だからさw 化粧教えてあげよっかw?えへ」


 正直ぶん殴りたいけど、眠いからやめた。


「お父様も酷よね。いっくらお姉ちゃんがさ、家族に思えないからってwいくらブサイクだからってね! って反応なし? つまんな」


 なんて夜をすごして、やっとの思いでこの家族から逃げられる。と感傷に浸る。



 朝、グロスター家の馬車に乗り、いいことを考えていた。そうだ! ホーエン家の弱点を教えようかなとか、色々考えた。私が出て行った瞬間、コイツらが落魄れるのが一番良いけどなー。

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