最強天能を持つ無能の成り上がり~試練を乗り越えて世界の救世主となるか魔王となるか~
御峰。
第1話 最強天能を持つ無能
「おい! クソ盾! さっさと魔物を止めろ!」
俺に向けられる怒声に、必死になって目の前の自分よりも遥かに巨大な魔物に体当たりをする。
体当たりと同時に
「ちっ! おせぇんだよ! エレクトロンランス!」
地面に叩きつけられると同時に後方から眩い光の槍が前方に飛んでいく。
轟音と共に巨大な魔物が黒い灰となり消えていった。
――【魔物『エンペラーオーガー』を倒して、貢献度1%以下のため、経験値1%を獲得しました。】
頭に響くのは、憎たらしい女神の声。
「よっしゃ~!
全身の痛みを感じながら、何とか起き上がると俺を見下ろす四人の視線が見える。
「よお、経験値
「あ、ああ……ありがとう、清野くん」
鼻で笑われて後ろを向く彼は
最高火力の天能『魔導ノ極』を手に入れたクラスメイトで、天能によってリーダーとなった。
今は彼の命令に背くクラスメイトは誰もいない。
他の四人もゴミを見るかのように俺を見下ろしていた。
俺は
15歳になる年の元旦。全世界の子供に『女神ノ祝福』が与えられる。
全ての人類に『
昔は貧富の格差も多かったと聞くが、天能が与えられるようになり、世界は大きく変わったという。
今は強い天能を持つ者が全ての権力を握るようになっている。
――――そう。目の前に高笑いをしている
国のお偉いさんより、今年天能開花する15歳の中から六人、今までの天能とは比べ物にならない程の力を持った天能を与えられると占いに出たそうだ。
そこから集まった六人の希望と呼ばれたのが俺達六人だ。もちろん、俺もその一人。
それぞれ特別な力を持った俺達は集められ、同じ学校、同じクラスメイトとなった。
最初はみんなが仲良かったはずだ。ただ俺達が一緒に過ごした時間はあまりにも短かった。
入学してたった三日で、俺達は『試練ノ塔』にぶち込まれる事になったのだ。
まさか……一度入れば外に出られないとは思わず、俺達は棟の攻略を余儀なくされる。
戦いの経験もない六人で指南書だけを頼りに狩りをし、レベルを上げながら魔物の素材でご飯を食べる生活を繰り返す。
それも一か月もなると慣れるモノで、俺達六人には生き残るための絆が芽生えたはずだった。
しかし、この塔は常に絶望に染まっている。
その中でも一番最初に呑まれたのが――――他でもない清野だった。
絶望に狂気じみて来た彼は、俺を盾とし狩りを始めるようになった。
最初こそ、周りも止めていたのだが、俺と彼と徐々に
もし俺に彼と同じ天能が与えられたら同じようになったのだろうか?
…………いや、今はそういう事を考えてもダメだ。
絶対に帰ると約束した妹のためにも、必ず戻る。
今はそれだけを考えよう。
全身を襲う痛みを我慢しながら身体を起こす。
俺が持つ天能のおかげで身体が動かなくなる事はない。
天能『絶対防壁』。
それが俺が持つ天能だ。
名前通り、どんな攻撃を受けようとも、ダメージを受ける事はない。
ただ…………ダメージを受けなくても、痛みは伴う。
激痛に耐えながら、でも異常のない身体を動かし、みんなの盾となるのが今の俺の役目だ。
この力のデメリットのもう一つ。
レベルを上げるために必要な経験値は、戦闘中の貢献度によって得られる。
例えば、一人で倒せば全ての経験値を手に入れる事ができるのだが、パーティーでの戦いだとパーティー内の貢献度によって得られる経験値が割り振られる。
その中でも
俺がいくら敵の突進を受け止めても得られる経験値は少ない。
その理由は、壁の場合、受けた被ダメージによって貢献度が増えるのだが、俺の天能は攻撃の被ダメージを無効化するというスキルだ。つまり、どんな攻撃を受けてもダメージは0だ。
これがもし軽減なのであれば、本来はダメージがあったと判定され貢献度判定にもなるのだが、無効化となると話は別になる。
そもそもダメージ自体がないので、俺がやってる事に意味がなくなるのだ。
なのに、俺は痛みを伴うというクソ仕様だったりする。
ただ、パーティーなのであれば、参加しただけで最低1%得られる仕様になっているので、俺はみんなが得られる経験値の1%の分しか得られていない。
清野くんの場合、半分を独り占めしているので一人だけレベルが段違いに上がっていき、一番強くなれるのだ。
他のメンバーも殆どが10%以上は獲得しているので、俺だけ数十分の一の進み具合だ。
「おい、無能! さっさと進むぞ!」
「分かった……」
最近は食事すら一番みすぼらしいモノになってきた。
他のメンバーもそれが当たり前になってきて、どんどん俺の立場は小さくなっていく。
なのに…………天能『絶対防壁』のおかげなのか、身体が弱る事に関しては全て無効にされる。
食事を取らなくとも果てしない絶望と空腹に陥りながら、身体は正常に動き続けるのだ。
清野くんに尻を叩かれて歩き進める。
叩かれても一切のダメージはないが、普通に痛い。
どこまで続くのかすら分からない塔をひたすらに進んだ。
そして、俺達の前に大きな――――――ドラゴンが現れた。
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