第1話 朝

「遅刻するよ!お母さんもう送ってかないからね!?」


下の階からお母さんが私を叩き起す声が響く。朝から元気だなぁ。ふわぁ、と欠伸をひとつ零し、体を起こす。


窓から差し込む日差しが眩しい。机の上にはノートとペンが散乱している。ゴミ箱がティッシュでいっぱいだ。


のそのそとベッドから出て、リビングへと向かった。


「ハルヒは?」

「もうとっくに朝練に出たわよ!ほら、早くあんたも身支度して学校行く!」


そう言ってお母さんはトーストを焼いてくれた。今日はイチゴジャムにしよう。


『昨日の10:00ごろ、〇〇市〇〇中学校の女子生徒が屋上から飛び降りる、という事故がありました。女子生徒は死亡、原因はいじめと思われます。学校長が本日、記者会見を行い…』


そこで私はテレビをブツリと消した。


飛び降り自殺?いじめ?馬鹿馬鹿しい。そんな事、ニュースにして何になるの?『物騒な世の中ね』って言われて終わるだけ。


「まだ中学生なのに自ら命を絶つ、だなんて。相当苦しかったのね」

「そうだね」


でもさ、彼女はもう救われたんだよ。


いじめという苦しみから、地獄という名のこの世界から、解放されたのだ。きっと幸せなことだろう。


死ぬ勇気があったんだ。


羨ましい。私はそんなもの、持ち合わせていない。欲しいな、その勇気。


私は残りのトーストを詰め込んで、学校へ行く準備をした。

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