②擬態するアンフォーチュナ

錦木

プロット

フォーチュナ(フォルトゥナ)=運命を司る女神。転じて運命、幸運などの意味。


◯世界観

現代日本で高校生が自分の外見と中身の歪みに悩みながらも明るく楽しく日常生活を送ります。


◯主要キャラクター

ビジュアル・性格・セリフイメージ等


磯貝智(いそがい・さとし)

主人公

どこを見ても平均的、一言つけるなら真面目そうな男子高校生二年生

優等生のふりをする劣等生

(クラス委員長だが成績は赤点続出)

ルールを遵守するのが好きで曲がったことは嫌いなバカ

好きなもの・ルール、肉、海洋生物

嫌いなもの・人を傷つけること


「バカっていうほうがバカだ!」

「そうですか、俺が悪かったです」

「バカだったら悪いかよ」


熊野笑美(くまの・えみ)

メインヒロイン

高校二年生

明るく脱色したショートカットにミニスカを合わせた典型的なギャル

ギャルのふりをする優等生

(成績はほぼ満点だが外見からの内申がそれをマイナスにしている)

他人に合わせがちな性格

好きなもの・テディベア、クレープ、ファンシーなもの

嫌いなもの・ゲテモノ料理


「ありえないっつーの」

「あんたのそういうところ嫌いじゃないけど」

「世の中白黒だけでわりきれないよ」


谷部沙樹(やべ・さき)

笑美のギャル友その一

智と笑美と同じクラス

背が高く、長い髪

口が悪いが友だち思い

好きなもの・姉、辛い料理、犬

嫌いなもの・ハッキリ喋らないやつ


「笑美にあんま構わないでくれる」

「なんか文句あんの?」

「用事がないならちょっと付き合って」


新見由理亜(にいみ・ゆりあ)

笑美のギャル友そのニ

智と笑美と同じクラス

背が低い、幼児体形、頭のてっぺんあたりでふたつに髪を結えているのがチャームポイント

お気楽な性格、トラブルを楽しむところがある

好きなもの・アメ(お菓子全般)、猫、ホラー

嫌いなもの・背が低いことをバカにされること


「さっちゃん、笑美が好きなんだぁ」

「ありあり〜?図星ですかなあ」

「お菓子この棚右から左全部もらう!」


竹中伸司(たけなか・しんじ)

野球少年、笑美の幼なじみ

クラスメイトで智の友人

空気を読めないところがあるが基本いいヤツ

好きなもの・野球、肉、米

嫌いなもの・勉強


「おっ委員長お疲れー」

「なんだよ、悩みごとか」

「らしくねえな、ちょっと休んだらどうだ」

 


谷部絵里花(やべ・えりか)

沙樹の姉、美術部の部長、高校三年生

フワフワした髪、フワフワした明るくてちょっと不思議なところのある美人


好きなもの・ラベンダー、絵を描くこと

嫌いなもの・肉(苦手)


「沙樹ちゃんをよろしくね。笑美ちゃんと仲良くしてあげてね」 

「智くん、オムライス好き?」

「女の子には男の子にはナイショの時間があるの」


近藤澪

先生

さばさばした性格

智や笑美を見守りながらちょっかいを出す



◯物語構成


・全5章構成



プロローグ~1章(2万字)

智が出会い頭に笑美に向かってジュースをこぼしてしまい、笑美の秘密を知ってしまいます。

それは周囲にギャル=バカに見せている笑美が制服のブラウスに満点のテストを隠し持っていたこと。

周囲に秀才なことを隠してあえてバカであることを通している笑美に黙っていてくれと言われて、智は条件をつけてそれを飲み込みます。

条件は、自分の勉強に付き合ってくれということと学級委員長をやりながらいつもテストは赤点である自分のことを隠しておいてくれということでした。

笑美は呆れつつもその条件を了承します。 

二人の共犯生活が始まります。

翌日から二人はこっそりと空いている放課後に勉強会を開くことにします。

なかなか上達しない智にイライラしながらも笑美は根気強く教えます。

智は物覚えの悪い自分をふがいなく感じ口の悪い笑美に反発しながらも懸命に勉強します。

普段の教室生活では知らぬ存ぜぬを決めこむ二人でしたが、笑美のギャル友である沙樹と由理亜は最近笑美の付き合いが悪いことに疑問を抱きます。

それでも逢瀬(勉強会)を重ねようと二人は学校の中で勉強できる場所を探します。

なんとか人の少なそうな場所を探していると美術室に行き当たりました。

そこにいたのは笑美の友人、沙樹の姉であり美術部員の絵里花でした。

どこか心当たりがないかと問いかける二人にそれなら、と絵里花は美術室の隣にある美術倉庫を薦めます。

二人はそこを放課後の集合場所とすることに決めました。

まず翌週に迫った小テストめがけて二人は勉強して、良い点を取ろうと決めました。

最初は損得の勘定だけで同盟関係を結んだ二人でしたが、勉強会を重ねていくにつれて笑美は(勉強を教えてくれる自分がいなければ)智はダメなんだ、智は勉強を教えてくれる笑美がいるから放課後がなんだか楽しみになっている自分に気づきます。

二人はそんなこと認めたくないのですが。

そんなある日、智が学校に行くと渋い顔をした笑美と沙樹に会います。

なにかトラブルか、と声をかける智に沙樹は笑美に近づかないように言いつけます。

自分たちが素行が悪いことを理由に智が笑美に脅迫してなにかをやらせているか嫌がらせをしているかと思ったからです。

説得や言い訳をすることでなんとかその場を乗り切った二人でしたが、沙樹からは疑惑の目を向けられます。

一方で笑美の友人である由理亜はそれを楽しみ、竹中は智の心配をしていました。

笑美は智に迷惑をかけたことを謝り、この埋め合わせはいつかすると言います。

智は別にそんなことは気にしなくてもいいと言いましたが笑美の表情は固いままでした。

だったらその気持ちを智は受け取ると言いました。

笑美から謝罪のかたちでなにかをしてもらうと。

だから、まずは目の前の小テストに集中しようと智は言いました。

笑美は笑顔でうなずきました。



2章(2万字)

第一の関門。小テスト。

順調に解けた気がする、という智を疑わしき目で見ながらも笑美はテストがうまくいったならそれでよしとほっとため息をつきます。

テスト明けということでいったん二人は別々に帰ります。

別に帰った二人でしたが、やっとテストから解放された気分とは裏腹になにかもやもやします。

智は笑美のなんだかんだいっても優しいところを思い出し、笑美は文句を言いながらも頑張ってテスト勉強をする智を思い浮かべます。

特に帰ってもすることもなし、とりあえず息抜きするかと智はゲームセンターに寄ります。

するとそこに笑美と友人の沙樹と由理亜がいることに気づきます。

二人のことについてはまだ説明しておらず笑美のことを追ってきたストーカーだと思われたくない智は笑美に助力を願います。

なんとか逃げ出して今度は本屋に来た智ですが、そこにまた笑美と友人が通りかかります。

何度か接触しそうになるのを懸命に避けて、なんとか智は帰路につきます。

家で勉強する智ですが、なにか笑美のことを思い出して集中しずらい日でした。

次の日、学校に行くと笑美はいつも通り仲間と楽しく談笑していました。

何気なく通り過ぎようとした智に待ったの声がかかりました。

笑美の友人、谷部沙樹が智を呼び止めたのです。

沙樹は智を引っ張ると有無を言わせず、体育館裏に引っ張っていきました。

人気のないところで沙樹はこそこそと美術倉庫でなにをしているんだ、と智に詰め寄ります。

もちろん智はなにも言えません。

智が口ごもるほどに沙樹のイライラはつのっていきます。

怒りが有頂天に達したときに沙樹が口にしたのは、美術部長の絵里花となにかしているんじゃないか、ということでした。

絵里花は沙樹の姉。

沙樹は重度のシスコンだったのです。

もちろん誤解だと言う智ですが、沙樹はまだ警戒しています。

とっさについたウソは自分が美術部に入り、新入生の勧誘をしようと思っている、ということでした。 

美術部の生徒は現在部長の絵里花のみでこのままでは実質上の廃部になる、という話を絵里花から聞いてのことでした。

別にそれが目的ではなかったのですが、沙樹は姉のこととなるとやる気を出し早速一年生を勧誘しようと言い出します。

そのことをその日の放課後に笑美に伝えると智の予想の想定内で、なにをやってるんだと叫ばれます。

ちょうど小テストの採点が返ってきた日ということで、一先ずその話は置いておいて、と互いのテストの結果を見せます。

笑美はいつも通り予想通りのほぼ満点。

対して、智は得意な国語はほぼ平均点ですが、他は赤点スレスレでした。

赤点を取らなかっただけでもまだヨシとする智に笑美はまだまだやれるはずと叱り飛ばします。

そこに絵里花が入ってきて二人にお茶をすすめます。

新人勧誘をしようとしている、と智が告げると絵里花は困ったように微笑みそんなことしなくていいのに、と言います。

やりたい人がやればいい、やりたい人がいないというならそのままなくなるのが部のためであり、生徒のためであるという絵里花。

反して笑美はそれは違うのではないか、と言います。

自分の才能を活かす場所、自分の本当にやりたいことをやる場所として「部活動」という居場所であり、足場を残しておくべきじゃないかと。

帰宅部の自分が言えたことではないが、力は貸すと笑美は言います。

その言葉を受けて、智はやってやろうという気になりました。

翌日から作戦会議が始まります。

集まったのは智と笑美と沙樹と由理亜(と、ニコニコと見守る絵里花)。

部の存続に必要な人数は最低でも五人、期限は一週間です。

智を抜いて四人を一週間にみつけなくてはならないというのは難問でした。

翌日から声かけにポスター掲示、ビラ配りと四人は奔走します。

それでも、なかなか四人は見つかりません。

やっと見つけた一年生は兼部でもいいなら、と智たちに声をかけました。

顧問の近藤先生に部員集めの結果について話に行くと、それはダメだと言われます。

兼部は部員のカウントには入れられないと。

それを絵里花に伝えにいくと絵里花はいつも通り微笑みながらそれでもみんながそこまで動いてくれたことが嬉しいと言います。

自分が現状をただありのままに受け止めることがいいと思っていたことがカッコ悪いとも。

落ち込む智ですが、「たったひとつの冴えたやりかた」と言って笑美が入部届を持っていきます。

そこには、笑美と沙樹と由理亜の名前が書いてありました。

それに智の名前を入れ込むと、四人の名前が部員名簿にのりました。

ドヤ顔をする笑美たちにこれじゃ一人足りない、と智が言うと絵里花は笑って自分の名前を書き込みました。

これで五人。

「とりあえず私が卒業するまでの期限つきだけど。みんなどうぞよろしくね」

そう言う絵里花にみんな笑顔を返しました。

一年という期限つきですが、これで美術部員が全員そろったのです。

人数が集まったということで書類を提出しに行くと顧問の近藤先生も受理してくれました。

これで美術部の件は一件落着。

次はすぐそこに中間テストが始まろうとしていました。



3章(2万字)

第二の関門。球技大会を控えた中間テスト。

美術部の一件を乗り越えた二人はこれまでの時間を取り戻すように放課後に勉強を頑張ります。

と言ってもそれを知るのは智と笑美と絵里花ばかり。

美術部員は集まりましたが、早速沙樹と由理亜は幽霊部員となっていました。

沙樹は欲しいものは自分のお金で買うという主義でバイトをしています。

由理亜はいつも人をおちょくるような発言をしているのですが、ミステリアスで放課後になにをしているかは笑美と沙樹でさえ知りません。

唯一知っているのは写真を撮るのが趣味ということでした。

放課後もいろいろなところで写真を撮っていると。

中間テストと並行してなぜかこの学校は球技大会も行います。

部活動の時間は短縮して、放課後には球技の練習があります。

中間テストと球技大会を同時期に行う意味がわからないと笑美は憤激していました。

笑美は運動はあまり得意ではないからです。

得意ではないというのは、下手ということではなく他の人間とバランスが取れずチームプレーに向いていないということからでした。

今年の二年生の球技は野球とバレーボール。

選択式ですが、どちらかというと男子が野球、女子がバレーボールというところが多かったです。

智が野球経験者なので野球にするというと、笑美も野球にすると言います。

実際にクラスメイトで野球部の竹中を交えて練習してみると投げるのも打つのも得意ですが、チームの連携が取れない笑美でした。

笑美がやりたいならそれをフォローするように智は動くと言います。

智がそう言うなら、球技大会に参加するのも悪くないと笑美も思うようになりました。

竹中と笑美は小学校、中学校がいっしょのいわゆる幼なじみ。

智との様子を見ていて竹中は笑美に言いました。

笑美が今までに見たことがないような顔をしてると。

才能があるゆえに誰にも寄りかからなかった笑美が智を頼り、才能がないゆえに誰にも助けの手を伸ばせなかった智が笑美に手を伸ばす。

美しいけれど、それは危うさも感じると。

笑美はそれを聞き流します。

練習を終えて帰ろうとした智は由理亜に捕まりました。

そしてそのまま、コンビニに寄り、駅前のショッピングを突き抜け、街中の自然公園に連れ出されます。

鳥や植物を撮影しながら、由理亜はのらりくらりと歩きます。

そして智に放課後の真実を聞きますが智は何も言いませんでした。

由理亜も何も言いませんでした。



4章(2万字)

球技大会まであと数日。

テストも大詰めを迎えていました。

帰り支度をして、笑美は智に小テストを渡しました。

自分はもう暗記しているからそれを勉強しろと笑美は言いました。

その小テストもテストの範囲に入っているからと。

智は感謝して、もう少し勉強していくと言いました。

放課後ギリギリまで勉強した後、智は帰ることにしました。

生徒玄関から出ようとしていたところ、不注意でクラスメイトとぶつかります。

その際、自分のテストと笑美のテストをばら撒いてしまいました。

クラス委員である自分と、クラスメイトからは劣等生の目を向けられている笑美の点数が見られてしまいます。

タイミングの悪いところにそこに絵里花と帰ろうとしていた沙樹も立ち寄りました。

そして翌日には、自分たちがバカ扱いしていた笑美が本当は頭がいいということが周囲にバレます。優等生だと思われている智が赤点ギリギリの点数をとっていることも。

笑美は智の不注意のことでキレます。 

智は笑美が怒るのももっともだけど、頭がいいっていうことをなぜ周囲にそこまで秘密にしなければならないのか理解しかねると言います。

笑美は勢いに任せるまま言いました。

中学生の頃、そして小学生の頃もひととき自分が他より抜きん出ているせいで孤立したことがあると。

だから、そんな不運を変えたくて隠していたことを。

智と笑美は喧嘩をして口をきかなくなります。

笑美は、沙樹と由理亜も避けて一人でいることが多くなりました。

そうしている間に中間テストがやってきます。

日直で教室の片付けをしていた智に笑美は言います。

放課後の勉強会はこれきりにしようと。

智と話すこともやめると。

笑美がやめたいならやめればいいと智は言いました。

笑美はそのまま立ち去ります。



5章(2万字)

中間テストが終わり、球技大会の日。

出番まで美術倉庫で智が待機していると由理亜が寄ってきました。

そして、もう実際は真実をとっくに知ってたと言います。

(勉強会のことではなく)

笑美が本当は頭がいいということ。

それを知っていて、沙樹も由理亜も彼女といっしょにいたことを。

このままでいいのかと由理亜は言います。

そして、手元にある写真を見せました。

それは美術部の人数集めで駆け回った日の写真、球技大会で練習をする写真。

そして、出会った日の笑美の写真がありました。

笑美がいるから今の自分がある。

じゃあ笑美は?今の自分は、笑美に何ができるだろう。

駆け出していって、智は笑美に謝ります。

笑美は、智に謝る気はないけどまた勉強会を開いていいか智に聞きます。

二人は仲直り。

ここで解決します。



エピローグ(1万字)

中間テストの結果が返ってきます。

智はなんと、赤点からほぼ全教科平均点になります。

これも笑美様様だなと言います。

笑美はいつも通りのほぼ満点。

笑美は自分って本当に不運だなと言います。

近くにある幸運に気付けなくて。

智はそんなことはないと笑美に言います。

笑美に出会ってから幸運続きだと。

笑美は赤面しました。


2巻の引き、二学期に続きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る