僕の 好きなもの

はじめからこういう運命だったんだ。

何をしてもうまくいかない。

運動だって、勉強だって、

人間関係だって。


でも、そんな僕にも好きなものというのはある。

それは、大人気実況グループ「ファニプロ」の動画を見ることだ。

そのグループの中でも特に可愛いのは…

さくら!!!

いやーね?それはもう可愛すぎて、可愛い!

天然で声も良くて…

……。

おっと取り乱したようだ。


話を戻すが僕はさくらを見るためだけに生きていると言っても過言ではない。

家はさくらを見れる最高な場所。

学校では空気のように過ごしている。

そんな僕に光をくれる人物が現れたんだ。




「…初めまして。内宮星奈です…。」

僕の教室である2年3組に転校生が来た。

自己紹介では、声が小さいなという印象しか抱かなかった。


早速転校生の机の周りには人だかりができている。

…3日もすれば飽きるんだろう。

まあ、そんなことは自分に関係ないなと思いながら家路につく。



…あれ?こんなところに家なんてあったっけ。

今日はさくらの誕生日だとルンルン気分で家に帰ろうとしていると、

見慣れない家を見つけた。

いつも下を向いて帰っているから、気が付かなかったのだろう。

一瞬転校生の存在が頭をよぎったが考えないことにした。


「あの…」


なんとなく朝聞いた声だ。まあ、僕に話しかけているのではないんだろうけど。


「あの…!」


声が大きくなった。

…もしかして僕?


振り返るとそこには転校生がいた。


「なんでしょうか…?」


「あの…この辺の道あまり知らなくて…教えていただけますか…」


「……。あ〜…すいません。自分もあまり知らなくて…」


「ち、ちょっと…っ」


……

やってしまった。転校生相手に道も教えられないだなんて。

これであの転校生にも嫌われたかな…


一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一


あのときもそうだった…



小学生の頃



「ねぇねぇ結人!昨日のファニプロ見た?」



あの頃は一緒にファニプロを見る友達もいたな。



「見たよ!やっぱりさくらは可愛いよな!」


「いやー。やっぱりまりんちゃんだろ〜。」



でもその友達が転校したんだっけ。



「なんでっ。なんで行っちゃうの。」


「ごめんね。ばいばい。」



そっから、、友達が居なくなった。


そして、いじめられるようになった。



「あいつ、ファニプロなんて見てるんだぜ」



なんて女子に言い回って。



「え〜。きもーい。」



なんて言われて。




あの時からだな。自分の好きなことに自身を持てなくなったのは。


それから僕は嫌われてもいいって思い始めた。


その時に来た転校生にも同じように。



神様なんていないんだな。


空に向かってそう呟いた。

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