白白明け、懺悔 逝きたい君に贈る拙い言の葉。
詩歩子
第1話 春の夜の夢
白白明け、昨日の出来事は嘘みたいに興奮が収まり、カシスオレンジ色の朝日で目が覚めたとき、もう昼過ぎだった。
昨日の温もりを残した布団の中で昨晩の囚われを思い巡らした。
あれは遠い春の夜の夢だったのかもしれない、とふと不安を諦めながら、一階へ降りて机の上を見ると、茶封筒の地味な置手紙が置いてあった。
やっぱり、昨晩には帰っちゃったんだ。
せっかく会えたのにまた帰っちゃったんだ。
夕べの顛末は本当に記憶が朧気で、かすかに暗い夜道を泣いて歩きながら、みんなに見つかったワンシーンだけは覚えていた。
お兄ちゃんは注視するなり、俺の妹に何をしたんだ、と怒鳴りつけながら彼に詰め寄り、数発も彼のかじかんだ頬を殴った。
それをお父さんが止めてお兄ちゃんを何とか、宥め、諭していた。
お母さんは顔を伏せながら泣くのを堪えていた。
『――真依、あんたは何がしたかったの?』
震えるように漏らしながら、その刹那の暈が被った満月がまるで伊弉諾尊が黄泉の国へ出向いたときに見上げたように妖艶だった。
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