第22話

 天使の持つ鍵からスペアを作り、私は家の中へ入りました。激しく雨の降る四月十日金曜の午前二時でした。


 私はキッチンで包丁を手に取り、ゆっくりと二階へ上がりました。この夜彼らが二人とも家にいることは夜まで見張っていたので確認済みでした。普段は放蕩三昧なくせに嵐だから家にこもるとはなんというきもの小ささでしょう。


 階段を上がり、私は先に天使の顔をうかがおうと包丁を懐へ隠し、天使の部屋へ入りました。


 天使は騒々しい嵐に怯えていて、私に気づくと大層に嬉しがりました。寂しい時に寄り添ってくれる存在だと認めてくれました。やはり私は間違っていないのだと確信できました。


 天使には私が必要なのです。そして私は枕元へ座り、天使が寝付くまで子守唄を歌ってあげました。天使は微笑みながら静かに眠りへといざなわれていきました。


 そうして私は天使の部屋をあとにし、彼らの寝室へと入っていったのです。私はふたつのシングルベッドを暗闇の中で確認し、いつもの歩幅でゆったりと近づきました。


 そしてありったけの力で包丁を順に振り下ろしたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る