第8話 仕事がはやいですわね。

 わたくしと実家の公爵家を王族侮辱の罪で罰する?


 あらあら殿下。

 おふたかたの美しさは罪でも恥でもありませんのよ。

 それに、まだ勘違いをなさってますのね。


 殿下は、筆頭公爵系の長女であるわたくしと婚約していたから王太子になっていただけですわ。

 わたくしとの婚約を破棄した以上、すでに王太子ではありませんもの。

 今の殿下は、容姿が飛び抜けて優れているだけの王子にすぎませんわ。


 ああ、それもすでに過去ですわね。


 だって、落ち目の王家は、わたくしの実家の力なしには、立っていることすらできないんですもの。



 あ。カールお義兄にい様! お待ちしておりましたわ!

 国会はどうなりましたの?


 え。もう正式に承認されたのですか!?

 あらあらまぁまぁまぁ!

 先程開かれた緊急議会で満場一致で!

 あの写真集の威力?

 ああ、なるほど。あれを見ればおふたりには『真実の愛』だけに生きて欲しいと誰でも思いますものね。


 あ。ということは……。

 お義兄にい様が国王陛下となったのですわね! おめでとうございます。


 え。そんな、昔のようにカールと呼んで欲しいだなんて……。


 ええ、そうですわ。わたくしの義兄あにであるカール様が、今や国王陛下なのですわ。

 ついさっき緊急議会で、現王家を廃止し、我が公爵家を新王家とすることが決定したそうですのよ。

 それにともなって、旧王家の不正蓄財や売国的行為の数々も暴かれ、殿下以外の旧王家の方々、前国王、王妃、第二王子、第一王女は既に収監済みですわ。

 つまり今の殿下は売国行為に励んでいた犯罪一族に連なる者にすぎませんのよ。

 カトリーナ嬢の御実家である男爵家も、王家と手を組んで密輸や人身売買に励んでいたので、収監済みですわ。


 おそらく旧王家もろとも一族族滅というお沙汰が下るかと。


 まぁ! 広場ではもう処刑台の準備が始まっておりますの?

 旧王家と違って仕事が早いですわね。


 いえいえ、嘘ではありませんわ。

 殿下とカトリーナ嬢が捕縛されていないのは、わたくしが父にお強請ねだりしておふたりへの処置を一時停止しているからですもの。


 わたくしが殿下に懸想しているから? だから助けた?


 まさか! あはは。ありえませんわ!

 先程も説明しましたが、どうして容姿が美しいの殿下に懸想などしましょうか。


 カトリーナ嬢と並んでいるからこそサマになっている殿下を。

 容姿以外は何の取り柄もない殿下を。

 無情無能無知無恥と四拍子揃った殿下を。

 人として愛せるはずがないで御座いましょう。


 わたくし『真実の愛』の結晶であるおふたかたをでているだけであって、殿下個人には何の愛着ももっておりませんの。

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